Nicotto Town


雪うさぎが呟く


目を閉じて

目を閉じて、記憶の中の道をたどる。夜。傷んだアスファルトの坂道。少し息が弾む坂道を登りきって一息つき、右に進みまた違う坂道を登る。坂の途中で立ち止まり、色あせた門扉を眺める。

明かりの消えた窓、草だらけの庭。左端の二階の窓が、私がはじめてもらった自室。父が、色を選んでよいと言ったので、緑のカーペットを敷いてもらった。その窓からは朝日が差し込んできた。

その部屋のベッドで、恋に悩み、仕事に悩み、時々熱を出し、たくさんの選択肢の中から自分の人生を決めてきた。

父が逝き、母を送って、家はもう私の物ではないけれど、けしてつかうことは無い鍵を今でも私は持っている。

だからだろうか。寂しい時、私の心はいつも坂道を登ってあの家に帰って行く。門の前に立ち止まり、灯りの無い窓をじっと見つめる。




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