商用車の隅には、短めの竿とルアーを詰めた鞄が乗っている。営業であちこち回る仕事も、わずかな暇を見つけて竿をふる趣味には都合がいい。
海辺の道を走りながらも、仕事の手順を確認する裏で、良さそうな釣りポイントを目は探していた。
岬と岬を途中で結ぶ形の赤い橋、車をとめるスペースがある。目的とする町からは3...
晴れ 時々 ウツ
商用車の隅には、短めの竿とルアーを詰めた鞄が乗っている。営業であちこち回る仕事も、わずかな暇を見つけて竿をふる趣味には都合がいい。
海辺の道を走りながらも、仕事の手順を確認する裏で、良さそうな釣りポイントを目は探していた。
岬と岬を途中で結ぶ形の赤い橋、車をとめるスペースがある。目的とする町からは3...
その女は、専業主婦と言われる存在だった。いえのなかやそとを掃除し、洗濯機が洗った下着や服を干してから、片付ける。子供の学校行事、地域の自治会、夫がしない雑事はすべて、その女の仕事だった。
一番大変なのは炊事だ。家族のために、特に子供の為に、身体に良いもの、おいしいもの、栄養価の高いもの&hellip...
ナビが教えてくれた近道は山越えだった。すっかり日が落ちてからの山越は神経を使う。ところどころに薄暗い電灯がともっているだけで、ヘッドライトに障害物が照らし出されないかとずっと気が張っている。
どうやら、山道を抜けてホッとしたとき、左手に灯りが見えた。近づきながらみると、コンビニだ。コーヒーと何か甘い...
その人のブログを見たのは、私がおもしろいと思っていた映画について書いていたからだ。なかなか斬新な切り口で、「ふーん、この映画をそういう風に見る人もいるんだ…」と感心し、なんとなくたまに覗いていた。
あまり頻繁に更新されてはいなかったが、ときどきコメントを書いたり訪問したりする人が14...
「俺、バイク乗ってたんだけどなぁ」というと、少女は顔の向きは変えず、口元だけで微笑んだ。「素敵ね。大きいの?」
「250だから、たいしたことない。バイトしてお金を貯めてもっと大きいのに買い換えていくんだ。いつかはハーレーなんて、オヤジくさい?」
少女は海を見つめたまま軽く首を振って否定した。あま...