友だち
- カテゴリ:自作小説
- 2018/02/04 11:13:00
その人のブログを見たのは、私がおもしろいと思っていた映画について書いていたからだ。なかなか斬新な切り口で、「ふーん、この映画をそういう風に見る人もいるんだ…」と感心し、なんとなくたまに覗いていた。
あまり頻繁に更新されてはいなかったが、ときどきコメントを書いたり訪問したりする人が14,5人くらいか。
しばらくは様子見をして、それから挨拶を一言残して、さらに時間をかけておそるおそる友達申請をしてみた。
あまり積極的ではありませんが・・・と承認されたときはちょっとうれしかった。コメントを残したりしているうちに、よくそこを訪問する人たちとも少しずつつながりができた。
ブログの主は私と同年代の会社員の女性。友達の方は、自営業のおじさんらしい人、たぶん高校生と思う若い女性、家庭の主婦と思えるおばさんなど、さまざま。
そのうち何人かとは友達になって、マイペースでのんびり仮想社会を楽しんでいた。
ありがたいことにみんな普通の人で、特に批判的な物言いをされることもなく、ちょっとした悩みにもそれぞれ親身なアドバイスなどをくれた。
このSNSはいいなぁと満足していたのだが、異変は突然起こった。彼女のブログが突然全く更新されなくなったのだ。もともと頻繁に更新する人ではなかったので、しばらくは気にしなかった。
だが、月が変わり、さらにひと月過ぎたころ、どうしたのだろうと気になった。更新されなくなって当然だが、コメントを書き込む人もぐんと減った。
そして、私は気づいてしまった。彼女のつながりで私が友達になった人たちも、同じ日からぱったりと出てこなくなったことに。他にも友達はいたので紛れて気が付かなかったけれど。
私は彼女のブログのコメント欄から、彼女の親しくしていたらしい人を一人ずつ探して行った。全部で12人ほどが、彼女と同じころ更新が止まったままになっている。
様々な自己紹介が書き込まれた、様々なアバター。彼女の友達。そして何人かは、私の友達。
性別も年代も、住んでいるところも様々なこの人たちが、一斉に書き込みをしなくなった、できなくなった・・・
それって。
私がつながっていたのは、本当はどんな人なの?
私はこのSNSをやめようと思う。やめる理由は書かずに。
訪問ありがとう
>私がつながっていたのは、本当はどんな人なの?
ネットの世界って不思議ですよね。
ニコットのようなSNSとは少し違いますが、ゲームの世界でも数人が一度に消えるってあります。
大概がその人たちは友人グループで、他のゲームに引っ越して行くんですね。
せっかく仲良しになれたのに寂しい限りですよね。お察しいたします。
良き心の友と出会えますように、それでは
このショートショートは、その通り、誰とも知れない人たちと親しくつながっていて、でももしかしたらそのほとんどが、仮想人格かもしれない・・・というオチです。