Nicotto Town


雪うさぎが呟く


釣れますか?

商用車の隅には、短めの竿とルアーを詰めた鞄が乗っている。営業であちこち回る仕事も、わずかな暇を見つけて竿をふる趣味には都合がいい。


海辺の道を走りながらも、仕事の手順を確認する裏で、良さそうな釣りポイントを目は探していた。

岬と岬を途中で結ぶ形の赤い橋、車をとめるスペースがある。目的とする町からは30分もかかるまい。仕事をすませて、ホテルからちょっと出てくるには十分。水面までもそんなに離れてはいない。

ここにしよう、仕事中だから本当にたくさんつれても困るし、少し気分転換に魚と遊んで、あとはリリースしてやればいい。
手にはもう魚のびくびくとした当たりが感じられるようだ。仕事もきっとうまくいく。

夜の橋はくらく、離れて灯る町並みの灯りがかえって暗さを増幅させるようだ。だが、慣れた仕掛けだからポケットライトの乏しい明かりでも十分。はしの欄干に寄ってそっと糸を繰り出す。
「釣れますか」突然声がかかって、あやうく叫び声が出そうになった。




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