釣れますか?
- カテゴリ:自作小説
- 2018/10/16 11:05:52
商用車の隅には、短めの竿とルアーを詰めた鞄が乗っている。営業であちこち回る仕事も、わずかな暇を見つけて竿をふる趣味には都合がいい。
海辺の道を走りながらも、仕事の手順を確認する裏で、良さそうな釣りポイントを目は探していた。
岬と岬を途中で結ぶ形の赤い橋、車をとめるスペースがある。目的とする町からは30分もかかるまい。仕事をすませて、ホテルからちょっと出てくるには十分。水面までもそんなに離れてはいない。
ここにしよう、仕事中だから本当にたくさんつれても困るし、少し気分転換に魚と遊んで、あとはリリースしてやればいい。
手にはもう魚のびくびくとした当たりが感じられるようだ。仕事もきっとうまくいく。
夜の橋はくらく、離れて灯る町並みの灯りがかえって暗さを増幅させるようだ。だが、慣れた仕掛けだからポケットライトの乏しい明かりでも十分。はしの欄干に寄ってそっと糸を繰り出す。
「釣れますか」突然声がかかって、あやうく叫び声が出そうになった。