Nicotto Town


雪うさぎが呟く


晴れ 時々 ウツ

手紙

居間で、老眼鏡をかけて夕刊を読んでいたら、買い物から帰った妻が少し困ったような顔で襖を開けた。「あなた、お手紙来ていましたけど・・・」と差し出されたのはありきたりの白い封筒。

妻の困惑顔の理由は封筒の裏を見てわかった。女名前で、住所の記載は無い。長いこと警察で働いてきたので、逆恨みとしかいえないよ...

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老人ホーム(続き)

きゅんと胃が痛んだ。風光明媚ではあるがいささか辺鄙な崖沿いの道は、くねくねと曲がっていて車は安全運転を強いられ、思ったより時間をとられてしまった。途中で買ったコンビニ弁当も食べずに来てしまったのだ。俺は鼻が誘う方へぶらぶら歩いていった。途中で清潔そうなエプロン姿のお姉さんとすれちがう。笑顔の挨拶が気...

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老人ホーム

前を家族らしい一団が歩いていく。受付の女性が不審な目を俺に向ける。愛想よく笑顔を作り、顎の動きで『あの人たちの仲間です』とアピールする。女は笑顔になって軽く頭を下げた。潜入成功。

ルポライターなるもの、アポイントメントの時間に現れて、決まりきった説明を聞くだけでは良い記事はかけない。自然な、取り繕...

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リセットボタン

真っ暗だった・・・体がしびれたようにあまり感覚がない。ぼんやりした頭を何度か振ってみると、ぼそぼそと話しかけているような声に気がついた。

何だろう・・・耳を傾けてみる。平板なその声は、俺の生い立ちを話していた。あまり家庭的には恵まれなかった子供の頃。ねたましさから、裕福で気弱なヤツをイジメ倒した。...

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三本のマッチ

停電の夜だった。懐中電灯の明かりでカップ麺の夕食を食べ終えると、のんのは出がらしのお茶を飲み、そろそろ交換しようと電池を入れてある引き出しを開けた。弱々しい丸い光の中にがらんとした空間が浮かび上がった。電池は、もうない。

そうだった、一昨日入れ替えて、予備を買いに出かけたけれど、歩いて行ける範囲で...

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