Summer Snow 1
- カテゴリ:自作小説
- 2009/09/28 16:32:46
どうか、
あの人に伝えて。
本当に、
あなたが好きだった、
――と。
誰もいない研究室に、カチャンという受話器を置く音が、やけに無表情に響いた。
「また、か」
どれだけ掛けても留守番電話サービスに転送されてしまう携帯電話に、菅原英介は深い溜息をつきながら、ぽつりと呟いた。
彼女と ―― 杉本蒼子と連絡が取れなくなって、これで三週間くらいになるだろうか。八月の頭に喧嘩をして以来だからそんなところだろう。
最初の一週間くらいは、蒼子がまだ怒っているのだろうと、英介も思っていた。けれど、それが二週間、三週間と続くとだんだん、不安が募っていく。
いや、不安なのは、携帯が繋がらないからではない。それだけなら、こんなに不安になったりなどしない。携帯どころか、自宅の電話すら繋がらないという事実が、英介の不安をあおっているのだ。
彼女の家には、常時誰かがいるはずである。家の電話に掛けて、誰も出ないなどということは考えられなかった。
なのに、どの時間帯に掛けても、誰も出ない。
それが三週間。
英介は、ついっと掛け時計に目をやると、机の上の資料を片付けた。そして、三週間前から持ち歩いている小箱が鞄の中にあることを確認すると、すくりと立ち上がった。
ここ数日、やろうやろうと思いながらも出来なかった事があった。「蒼子の家へ行く」という、たったそれだけの事だ。たったそれだけの事なのに、それが出来なかった。ドイツ行きが決定してからというもの、残務整理が後を立たず、残業続きだった事。理由をつければそんな所だろう。
けれど、それよりも大きい理由は「蒼子の家に行ってはいけない」という思いこみが英介の中にある事だ。
何か、とても嫌な予感がするのだ。
―― 蒼子の家に行ってはいけない。
拭えない不安は、この予感にも原因があった。
けれど、動かなければ、この不安は消える事がない事は、英介自身が一番よく分かっていた。
英介は鞄を取り上げると、研究室を後にした。
調子よく車を走らせていた英介は、蒼子の家に近づくにしたがってぼやけてくる記憶に、首を傾げた。
何度も行ったことのある蒼子の自宅。忘れるはずなどない。なのに、考えれば考えるほど、蒼子の家の場所が解らなくなる。
次の信号を左折して ―― 。
いや、右折だったか。
英介は、一度行ったことのある場所は、確実に記憶している。一度どころか、もう何度も何度も行ったことのある場所を、忘れるはずなどない。なのに、本当にわからない。
そんな自分に愕然としながら、英介は車を路肩に寄せた。
不安が、だんだん焦りに変わっていく。
「どういうことだ?」
ぽつりと呟いたその言葉が、余計に焦燥感を煽った。
英介は、おもむろに携帯電話を取り出すと、十年来の親友、麻生和馬の番号を引っ張り出した。
英介と蒼子を引き合わせたのは、和馬だった。蒼子と和馬はいわゆる幼馴染というやつで、もちろん家も近かった。
『はい、麻生』
何コールめかで出た、聞きなれた声に、英介はほっとしたように息をついた。
「和馬か? 菅原だけど」
『おう、どうした』
「今近くまで来ているんだ。そっちに寄ってもいいか?」
『別に構わんが……。何かあったのか?』
突然の英介の言葉に、和馬は怪訝そうな声を出した。
「いや、別に。ちょっと時間が余ってしまってな」
『そうか。で、すぐくるのか?』
「ああ」
『OK』
和馬の答えを聞くと、英介は電話を切った。
英介は自分の今いる場所から、和馬の家までの道程を思い浮かべた。和馬の家まではわかる。けれど、その近くにあるはずの蒼子の家を思い出そうとすると、記憶に霧がかかる。まるで何かに目隠しされたように全てが曖昧になるのだ。
英介は、軽く頭を振ると車を出した。
ものの五分とかからないうちに、現在は実家を出て一人暮しをしている和馬のアパートに着いた。英介はいつもの場所に車を止めると和馬の部屋へと向かった。
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大丈夫デス~。消さないからww
というか。えーっと、ブログのを読んでいただけてるのでしょうか。
あれ、無駄に長いのに、まだ終わってないから……。
というか。
これ、HPのオリジナルカテゴリには実はUPしてありますのことよ。
これと言うか、このシリーズ?
ただ、それは、この前のブログとはまた、場所が違うのです……。
ややこしくてゴメン(>_<)
でも、読んでいただけるって嬉しいです!!!!!
新作ですか?
HPの作品拝読真っ只中ですから、後から読ませてもらいたいので消さないで下さいね!
ありがとうですww
前回のものは、長編のさわりなので、逆に意味不明なのですよ。
これだけの短さだと(苦笑)
続きは、今日UPしますね~
>ななみさん
ありがとですw
そう言っていただけると嬉しい(>_<)
過去の汚点をさらして、続きが気になるといっていただければ、
これほどうれしいことはない\(^o^)/
続きがめっちゃ気になります!^^*
前回のものより読みやすかったですb
続き楽しみにしてますねっ
コメありがとです~。
いやあ、今はこんな冒頭の書き方はしません。
何しろ、昔のやつですから~。
って、あれ? 今でもするか? するかも……。
一文を入れるのは好きで、よくやりますが。
有難うございます~。
日に2000字以内でUPしていきますわ~。
もともと、SSなのに、こんなに分割しなきゃいけないのも、笑える(^^ゞ
みおさんの頭の中、僕のとは全然違うんだろうな。^^;
続き、楽しみにしていますね。^^
コメありがとうです(>_<)
嬉しすぎです。
蒼子の家族に――ああ、そういう見方もあるんだ!
参考になりましたww
自分で書いてると、もう、1本しか道が見えてないから(笑)
もう出来上がってる話なので、早々にUPします~~~~。
いやあ、どうでもいいとか思われるかと思ってたので。えへ。
英介さん、蒼子さん家族に何かしちゃった?
続きが楽しみです。(わくわく^^)
わー。コメありがとw
ようやく復帰ですか。おめでとーww
大変でしたねえ~。
いえ(^^ゞ
活動を始めたというか、HP自体の立ち上げは、もう10年近く前ですから(苦笑)
まあ、最初は、ここでUPする気はなかったんですけどね。
これも、書いたのは、おそらく10年くらい前(オイ!)
えーっと、この話は、もともと、ミステリ系の話のサイドストーリーですw
そいでもって、コメントは、う~ん、敬遠されるんじゃないかなあ(笑)
HPでも、あまり感想は頂けないですから。
おいらのどっかで見たようなやつとは違うww
ようやく復帰できそうです
もうでてきません