Summer Snow 2
- カテゴリ:自作小説
- 2009/09/29 09:01:05
このアパートには、インターフォンなどという洒落たものはついていない。英介がコンコンッと控えめなノックをすると、室内から「開いてるぞー」という声が聞こえた。
相変わらずの科白に、英介は嘆息しながらドアを開けた。
「最近は物騒なんだぞ。もう少し気をつけたらどうだ」
「あんな神経質なノックするのは、お前だけだよ。大体この部屋には盗まれて困るもんなんてないしな」
パソコンの前に座っている和馬は、振り向きもせず言った。
「まったく。おまえという奴は……」
呆れたように言った英介に、和馬は椅子をくるりと回転させて英介の方を向いた。
「で、なにがあった」
「何がだ?」
「 ―― お前なあ。今にも死にそうな声で電話掛けてきて、何がはないだろ。何があった」
まっすぐな和馬の視線が、英介を捕らえる。逃れらないその視線に、英介は軽く息をついた。
「おまえは、誤魔化せんな」
「話があるんだろ?」
「……ああ」
短く答えた英介は、緩慢な動作で靴を脱ぐと部屋に上がりこんだ。そして、いつもの位置に座った。
「聞きたい事があるんだ」
英介の真摯な瞳に、和馬はおもむろに椅子から立ち上がると、話し込む時の定位置であるベッドの縁に座った。
「何だ?」
「蒼子と連絡が取れない」
「……蒼、子?」
怪訝な顔をして言った和馬には気がつかず、英介は続けた。
「ああ。今も、家にも行こうとしたんだが、何故か彼女の家に近くなると、どこをどう行ったらいいか分からなくなって……」
「英介?」
「僕がおかしいのは、分かっている。家が分からないなんて」
「いや、あのな」
「電話も、もう三週間も……」
「いや、英介、あのな。蒼子って誰だ?」
「 ―― は?」
和馬の言葉に、英介は目を見開いた。他でもない和馬が、何故そんな事を言うのか。
「だから、その蒼子ってのは誰なんだ?」
「誰って、杉本蒼子だよ。お前の幼馴染みの」
「おさななじみぃ?」
怪訝な顔をした和馬に、英介は背筋が凍りついていく感覚を味わった。
「知らない……の、か?」
「 ―― 悪いけど」
その言葉に、英介は愕然とした。
和馬に聞けば、何か分かるかもしれないと思ったのだ。
なのに、その和馬自身が蒼子を知らないという。
「何? お前の彼女か?」
「あ……ああ。だが ―― 」
まだ、思考が混乱している。
本当に、蒼子という人間が存在したのか。そんな根本的なところまでが揺らいでいる。
蒼子は、本当に存在したのだろうか。
いや……いた、はずだ。
しかし、いないのであれば、
だれも電話にでない事や、
家が分からない事の説明がつく。
「英介、お前、顔色悪いぞ」
「あ ―― 」
和馬の声に、英介ははっと我に返った。
「……また、出なおしてくる」
「おい、英介。お前、本当に大丈夫なのか?」
ふらりと立ち上がった英介に、和馬は心配そうに言った。
「大丈夫だ。また連絡するよ」
「あーあ。あいつ、憔悴しきってるな」
かなりショックだったのだろう。青ざめるを通り越して、既に土色というような顔色をしていた。
「ったく。やっかいな事、押しつけやがって」
言った和馬はくしゃりと前髪を掻き揚げると、うすぼんやりと現れた白い影を、きっと睨めつけた。
そんな和馬に、その影 ―― 杉本蒼子は、申し訳なさそうに笑みを浮かべた。
『ごめんね。和くん』
空気がゆれ、そんな言葉が和馬の耳に届いた。
「まったくだよ。あいつ騙すとさ、罪悪感の塊になるんだよ」
和馬が「蒼子ってのは、誰なんだ」と言った時のあの英介の顔。思い出すだけでも、胸が締め付けられる。
「相当、思い詰めてるぞ。あれは」
『……』
「このまま、ほっとくのか?」
和馬の言葉に、蒼子は俯いた。
「蒼子の頼みだから、今回は嘘をついた。けどな、それは、お前が言ったからだけじゃない。今のあいつに本当の事を言うとヤバイと思ったからだ」
電話が繋がらない、と英介は言った。家が分からない、とも……。
どうやったのかは分からないが、その原因は蒼子らしかった。蒼子は英介に、本当のことを知らせたくなかったのだ。だから、英介の周りにある蒼子という存在を、消しているのだと蒼子は和馬に言った。
けれど、そんなものは長続きしない。
それは蒼子自身もわかっているはずだ。
『うん。ごめん。分かってる』
こくりと頷いた蒼子は、力なく笑んだ。
「蒼子」
『英介さんには、私のこと、忘れて欲しいの』
「なら、自分の口からそう言えよ」
『ダメ。こんな姿で、英介さんには、会えない』
言った蒼子に、和馬は深い溜息をついた。蒼子が和馬の前に現れたのが、二週間前だった。以降、平行線をたどりつづける会話。どれだけたっても、そこから話が動かない。
『あの人はやさしい ―― やさしすぎる。だから』
「でもな、蒼子。あいつが、それで忘れられるとでも思ってるのか?」
『……』
和馬の言葉に、蒼子は何も言えずにただ沈黙を返した。
ありがとうですww
あと、数回お付き合いくださいなww
ありがとw
ちゃんと、今日UPするから~~。
もともと、短編にも満たないSSですからねえ。
本来は、分割してUPするようなものではないですから……。
文字数制限がなければ、一括でがつっとUPするのですが(^^ゞ
蒼子さんは、なぜそんな姿になっているのか、
最終的に、英介は真実を知るのか・・・。
気になります。
全部わかったあとに、もう一度アタマから読み返したいですね。
違う見方ができそうです^^
ということで、続き、たのしみにしてます♪♪
は~いww
じゃあ、早々にww
いや、定番化するつもりはありませんよ~。
釣りもしてきたので、日記も書きますわよw
とりあえず、この話はラストまでUPしますよ。
つーか、途中でやめるのもねえ(笑)
楽しんでいただければ、これ幸いww
そのうち、これが定番化されていくのだろうか・・・。
それはそれで楽しいけどね。^^
共謀(笑)
そこまで、突っ込んだ話じゃないですからww
英介は、コイツアホか?と言いたくなるくらい、お人よしですww
>もっこしゃん
タダって(笑)
大丈夫ですw
無理なんか一切してませーん。
なにしろ、昔の汚点を披露してるだけですからww
でも、今は書かない文章なので、ある意味新鮮です~
でも無理しないでね