Nicotto Town


つれづれ花残月 ← 和.com


【アナカン】 代筆屋の受難エクリュ編 


内輪で盛り上がる水曜アナカン祭。まず初めに謝ります。ごめん! 皆さまのイメージ崩したかも (っω`-。)



    ◆◆

「思っていたのと、違うんだ」

ぽつりつぶやいたエクリュの声に、レドは顔を上げ、なに言っているんだと言いたげな表情を向ける。
でも、それだけだ。エクリュが何を言おうと、レドはあまり乗ってこない。
それ対し、ブラッドは

「ばっかじゃねーの? そうそう思い通りに行くかよ」

辛辣な一言を返してくる。
何に対してエクリュがそう言ったのか、理解している訳ではないだろうに。
それでも、例え話の内容が全く解らずとも、意外に外さず、バカだ阿呆だと言ってくるのがブラッドだ。

「なら、お前ならどうする?」
「知るかよ!」

これ以上、俺を苛立たせるんじゃねぇ!
相談しているようでいて、その実、詳しく話すつもりのないエクリュを、ブラッドは睨みつけた。

人は持って生まれた性質の範囲内から、それほど大きくは外れない。
そしてそれは、思考やその展開方向性に現れる。咄嗟の場合の受け答えや行動は、なおさらだ。
だから何を言っても何をしても、生徒会室の反応は、安定していつもと同じ。
そして、いつもと同じような終わりを見る。

エクリュはふっと笑みを浮かべ、頬杖をついたまま窓の外に目を向けた。

……代筆屋が誰なのか、それを調べるのは、そう手間ではなかった。
依頼の仕方や受け渡しの方法などは、口外・悪用等厳禁! と書かれた古い資料に残っている。

エクリュとは寮が違うので、部屋を訪ねるのは難しいが、例えば校内のどこか……。
おそらくは、代筆屋への依頼場所であるターナー寮近くの噴水あたりで。
偶然会ったフリでもして、話かけてみるのもオモシロいはずだ。

だが、エクリュは、すぐには動けなかった。

「どうにも一致しない」

手紙の内容と、代筆屋本人とが。
そう思ってしまうと、あれほどまでに歓喜を持って惹きつけられた手紙が。
何度も何度も飽きることなく読み返した手紙が。
ただキレイなだけの作り物めいて、エクリュを苛立たせていた。

そんな苛立ちを隠し、エクリュは窓の下、寮から本校舎へ続く近道を歩く、一人の生徒を見つめる。

エクリュが探していた代筆屋・セルリアンは4年の成績優秀者で、先生の評価も良い、いわゆる優等生。
慎重で思慮深く、見た目にもかなり落ち着いた印象を与える。それはそれで魅力的だが。
あの文面が、あの表現が彼のものだと知っているエクリュには……。
どうにも、つかみどころがないように思えた。

「どちらが本物なんだろう…」

そんなことを思っては見ても、目の前で動いている彼は、幻じゃぁ、ない。
なら、あの文面は? あの表現は?

そんなことを思い日を過ごし、生徒会の仕事も滞り、
レドだけでなく、ブラッドの目にも容赦のない光が灯り始めた頃。
一通の手紙が届く。

差出人は知らない名前だったが、封を開くと、彼だろうと思えた。
久しぶりに見る手紙は、より強くセルリアンを思い浮かべるせいか、やはり噛み合わなさを覚える。

彼は想像以上に役者なのか、稀代の嘘つきか。
それとも、彼の書く言葉以外には見ることのできない彼が、いるのだろうか?

その考えは、まるで正解を引き当てたようにエクリュに浸透していく。
ああ…… と声にもならない声がため息のように口から洩れた。

「いるんだ…… きっと」

彼の中にいる彼…… 知りたい。知りたい。知りたい。
エクリュは心の内で叫ぶ。同時に、自分の口角がゆっくりと上がっていくのを感じていた。

「……レド、エクリュのヤロー、目がイッちまっているぞ。気味悪ぃな」
「気にしたら負けだ、ブラッド」
「そこの外野、うるさいよ。僕はいま楽しいんだから放っておいてくれ」

くすくすと、上半身を折って笑うエクリュに、ブラッドは苦虫をつぶしたような顔でうぜぇとつぶやき。
レドは目を細め、それからすぐに手元の書類に視線を戻した。

さやりさやりと葉擦れの音が聞こえ、夏の訪れを感じさせる日差しが世界を照らす。
教会脇のクスノキの洞でエクリュがひとつのメモを見つけたのは、そんな心地のいい季節だった。

週末、講堂の2階。それが、たったいま手にした情報だ。
それを見てエクリュは、セルリアンの心に踏み入る最初のキッカケを拾ったことに歓喜する。

さぁ、始めよう。まずは一歩。そしてもう一歩。焦らずゆっくりと、彼の心に踏み入って行こう。
その過程で、彼自身から僕への手紙を、ねだってみよう。

セルリアン、僕に手紙を書いて。
君の感じ方、好ましいと思うこと、嫌悪するもの、許容できないことなど、すべて。
心の底の、さらに奥まで僕に見せて。





そうして今、エクリュは階段から落ちようとしているセルリアンに、腕を伸ばしていた。
受け止めた瞬間、手首にずしりと負荷がかかり、力が抜けそうになる。が、そんな感覚はすぐに消えた。
アンバー先生と4年のカーマインが、エクリュとともにセルリアンを支えている。

呆然自失のセルリアンの無事を確認しながら、ホッと息をつき階段を見上げると、
3年のアラバスターが、いまだセルリアンに憎々しげな目を向けていた。

「君がしたことは見たからね」

ひとまず脅すように睨みつけておく。
が、アラバスターはウィンザー&ニュートン寮だから、
ホルベイン寮のエクリュが何を言っても脅しにすらならないかもしれないけれど。

あとでブラッドにも耳うちしておこう。
ヤツはウィンザー&ニュートン寮の生徒会役員と懇意だから丸投げしても、何らかの形で動くだろう。

頭の中で段取りをつけている間に、アンバー先生がセルリアンを医務室に運ぶ。
邪魔にされているのは、すぐに解った。

彼を見るアンバー先生のまなざしは、ひどく熱い。
そして、カーマインも。彼が暴露したアンバー先生の恋人、そして結婚の二文字は場の空気を変える。

「それはおめでとうございます」

すかさず祝意を告げると、アンバー先生はそっと目を伏せ、困惑したような笑みを浮かべ医務室を出て行った。
あとはカーマインひとり……。

「君はもう部屋に帰って寝るといいよ。僕がセルリアンを看ているから」

微熱のせいかセルリアンの寝顔は少し苦しそうに見える。
その傍でかいがいしく額に置かれたタオルを冷やしてはセルリアンの額に戻すカーマインに、
エクリュはそういって退室を促した。が、

「セルリアンはうちの寮の生徒なので。先輩こそホルベイン寮にお戻りください」

消灯前の見回りがあるんじゃないですか? と正論で切り返され、エクリュは引き時を悟る。
どこまでも寮の違いが邪魔をするのか……。
そんな苦々しい思いを抱え、エクリュはホルベイン寮への夜道を歩いた。


~ * End * ~~~ この続きは、ネコ衛門さん著『クロッカスの花』でお楽しみください。


セルリアン ❧響さん
アンバー先生 エメラルドさん
カーマイン ☤ネコ衛門☤さん
エクリュ 和.com
レド
ブラッド


■――

コラボ作品ライトニング(こちらから各ブログに飛べます! めっちゃ便利です)
 https://writening.net/page?E67Zsx

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【シーズンⅠ】
 https://jackthenikotto.wixsite.com/nicozaka46/blank-17
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――■

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2020/03/28 13:02
今のところ、そんなに突っ込むヤツもいないですしw
突っ込んだところで素直に口を開くヤツじゃねぇ……と解っていたら、
メンドーなこと、しないじゃないですか。
こういうシーンって、二人より三人のほうが書きやすいっすねwww

はい。ガンバります ( ̄~ ̄lll) ちょっと自信ないんですけど。
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2020/03/28 12:03
>そう思ってしまうと……ただキレイなだけの作り物めいて、エクリュを苛立たせていた。
ここで思わずニヤニヤしてしまいました。
そしてあしらう生徒会メンバー。
ああいう感じで対応されるから、全ては明かさずとも愚痴れるんだろうなぁ。
親身に聞くような相手だったらエクリュは口に出さなそう。

↓書く書く未遂でも良いです。でも期待してます(o´艸`)
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2020/03/27 11:32
うん、ガンバるw
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2020/03/26 13:05
かくかく詐欺は私もよくやる。
でも期待して待っとく!
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2020/03/26 08:49
ありがとうございます~♪
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2020/03/26 08:49
みんなで書いていると、そういうのありますよーヾ(≧▽≦)ノ゙
その違いも、ここで遊ぶ醍醐味ですねw
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2020/03/26 08:48
>どーしても演劇祭の脚本を

この要素まで入れると、3000字では収まらない可能性大だったので (*ノωノ)
これは、ひとまず脇に置きました。
まずは本人に興味を持たせないよねぇ ( ✧ ̄ー ̄) ニヤリ
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2020/03/26 08:45
クロッカスの花の「手紙を書いて」と転寮に合わせたんだよーーー。
鏡の国でカーマインがすんごく良いセリフを言ってくれているから借りたw
そう言ってもらえると嬉しいわーヾ(≧▽≦)ノ゙
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2020/03/26 08:42
次か、その次には! 肘を捕まれ「走れ!」 の後を ( ✧ ̄ー ̄) ニヤリ
書く書く詐欺にならないことを祈ってくれ!
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2020/03/26 06:28
ライトニング更新完了(^∇^)ゞ!
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2020/03/25 23:52
ふと気づいたのは和.comさんのカーメインさんっちキャラクターは庶民的な話し方。ネコ衛門さんのは上流ふう。上手く読み分けると、寄宿学校のいじめモンダイでもあった階級制度も加味した世界観になるなってw
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2020/03/25 23:49
あ 自分的にはね
エクリュはどーしても演劇祭の脚本をセルリアンに手伝ってほしかったので
寮替えさせたかったんだと思ってた^^
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2020/03/25 23:06
いやぁ 。゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!!

ものすごいタラシ(失礼w)のエクリュが本気になったんだよ
いいわぁ この展開
心が震えました(//∇//)
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2020/03/25 22:43
>「気にしたら負けだ、ブラッド」
私もそう思ったよ、レドww

ねこちゃんは間に合わないと思ってたし
和ちゃんは今週書かないのかと思ってたので
嬉しい悲鳴❤
アバター
2020/03/25 22:40
思いがけず三本アップだったからね。私は間に合わないかと、焦ったわ~。
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2020/03/25 22:39
この日の夜にカーマイン事故で転寮計画を立て、翌日から同日!
さらには手紙を書いて……まで、すんごいスピードで接近するんだけどねw
カーマインに、あんたホルベイン寮でしょと言われたのが
すんごい悔しかったんだよ、きっと (((o≧▽≦)ノ彡
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2020/03/25 22:36
今週のアナカン祭りも楽しいな。
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2020/03/25 22:35
寮が違って、学年が違うと、意外に接点を見つけるの難しいかも。
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2020/03/25 22:34
>「いるんだ…… きっと」
>彼の中にいる彼…… 知りたい。知りたい。知りたい。
>エクリュは心の内で叫ぶ。同時に、自分の口角がゆっくりと上がっていくのを感じていた。

ここ!いいな!!!
私も代筆屋の受難の時にエクリュが登場するところに違和感あったんだよね。
接点がなさすぎる。 まぁ ひとめぼれとかあるっちゃーあるかw
だけど、このお話の流れだと すごく納得だ。
代筆屋の中の本物の彼に興味が沸いた 成績優秀で落ち着いた雰囲気の彼の中にある
別の何か それが知りたいと思った ってところがはじまりならば すごく納得だよー
アバター
2020/03/25 22:33
本命相手にはやっぱ少しくらいはお行儀よくなるもんじゃね (((o≧▽≦)ノ彡
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2020/03/25 22:31
多分あれだね
レド相手だったら 全然良心の呵責なく 好きなようにふんだくれるけど
セルリアンが天才的な詩人なので ちょっと特別なんだね〜( ´∀`)
アバター
2020/03/25 22:28
確かにエクリュくんのイメージ変わったかも!( ゚o ゚)
意外に真面目な子だった
もっとやりたい放題かと思ったのに。。。 ←
セルリアン
剥き身の殻なし甘エビ状態なのに誰にも食べることができないのか
アバター
2020/03/25 22:25
10カ月遅れましたが! ずっと気になってはいたんですよーーー。
アバター
2020/03/25 22:23
ラブレターと本人との違和感をキッカケに、どんどん引き込まれた感じですかねw
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2020/03/25 22:22
おわー アナカンフルコース!
φ(´∀`* )ψ いただきまーす
アバター
2020/03/25 22:19
エクリュ、はじめからちゃんとセルリアンが好きだったんだなと思ったら↓なるほど。
もしかすると人間的な興味の方が勝ってるのかなとか色々考えました。

アバター
2020/03/25 22:01
さて言い訳です。何故こうなったか……。

エメラルドさんの人肉裁判(下)で、
アンバー先生に追っ払われても速攻、戻ってきます、エクリュは医務室に。
そしてネコ衛門さんの鏡の国の戦争Ⅴで、
エクリュはしつこく、しつこく食い下がるもカーマインに追い出されます。医務室から。

私の頭の中では、まだ接点ないのに、ちゃんと顔合わせもしてないのに。
講堂に出向くまでに、キッチリ惚れ込んで~執着まで持たせなければいかん展開が、
気が付けば、しっかりと出来上がっていました!

PC前で大爆笑です (((o≧▽≦)ノ彡 開き直って辻褄合わせをしてみました。

エクリュはたぶん、なんかちょっと良いな~、で〝好き〟が言えるヤツです。
が、和ちゃんは〝好き〟という感情を動かすには、それが動くだけの理由が必要なんです!
こういうところ、エクリュと私は、ほんっと合わない。
私がエクリュを書けないのは、この合わなさが最大の理由かと思われ。

ともあれ課題、10カ月遅れとなりましたが! 提出します。
タイヘンお待たせをいたしました。



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