Moon night
- カテゴリ:自作小説
- 2009/10/14 11:34:43
どこからか、ヴァイオリンの切なげなハイノートが聞こえてきた。
ベッドの中でまどろんでいた青年は、耳に入ってきたその音にうっすらと目を開けた。
CDでも掛けっぱなしで寝たのだろうか。
そう思いながら、コンポのリモコンをサイドボードから取り上げストップを押す。
が、それでも、その音は消えることはなかった。
リモコンの電池が弱くなっているのか、とぼんやりと考え、むくりと起き上がった青年は、眠い目をしばたかせながら、コンポの方を見やる。
けれど、コンポの電源は完全に落ちていて、暗い部屋の中には、ただ静寂があった。
音の聞こえる方をたどると、どうやら、屋外らしい。
彼はちらりと時計を見やる。
午前0時。
――こんな時間に、外でヴァイオリンを弾くなどと、なんと酔狂な……。
そう思いながらも、その音に導かれるように、彼はゆっくりとベランダへと足を運んだ。
カーテンをすうっと引くと、外は妙に明るかった。
とはいってもその光は、じりじりと照り付ける太陽の光ではなく、静かに降り積もる月の光……。
彼は、ゆっくりと窓を開けた。
それと同時に、ヴァイオリンの音も少しだけ、大きくなった。
ベランダへ出ては見たが、くるりとあたりを見回した限りでは、ヴァイオリンを弾いている人の姿など見当たらない。
けれど、その音は、室内ではなく室外で奏でられているものに違いなかった。
その音に誘われるように、彼はすぐさま外へ出た。
けれど、どれだけ歩こうが、音は近くならない。
ある一定の距離までは大きくなるものの、それ以上の音量になることはない。
――しかし。どうして、誰も文句を言わないのだろう。
彼は、ふとそんなことを思った。
確かに、聞こえてくるヴァイオリンの音は、とても澄んだ音色だ。
けれど、こんな夜中の、近所の迷惑も顧みない演奏を、何故誰も咎めないのか。
不快ではないけれど、現に彼はこの音で目を覚ましたのだ。
害がないとは言わせない。
彼は、足早に、音のするほうへと足を勧めた。
けれど、どれだけ行っても、その音は近づきもしない。
いや、だんだん遠くなっているような気がする。
どこまで歩いたのか、彼は河川敷まで来ていた。
そこまでは、家から10分ほどかかる。そんなに歩いたのだろうか、と、ふと思う。
と、突然ヴァイオリンの音がひときわ大きくなった。
彼は驚いたように、天を見上げた。
そこには、丸く大きな月。
音は、そこから聞こえていた。
何故、月からそんなものが聞こえるのか。
そう考える前に「ああ、そうか」と納得してしまっている自分がいた。
ただ、闇の中に浮かぶ白い月。
それ以外のものは、ここには何もなかった。
しんと静まり返ったあたりに、冷たい光が降りそそぐ。
そんな中、ヴァイオリンの音色だけは、消えることがなかった。
10年位前に、HPでUPしたものです。
「月の魔力」というテーマを頂いて書いたものなのですが、なんとな~く、微妙な感じになってしまいました。
久しぶりに、SSをUPしてみようかな?とか思って、のUP。
単なるネタ切れとも言う(笑)
ありがとうございます~。
そう言っていただけると嬉しいですw
しかもヴァイオリン、月などが揃うとほんとに私の好みに合うもので・・・
本当にみおさんは凄いですねv
うれしい~ww
空気とか、音とかね。
そういうものを感じてもらえると嬉しいと思ってるのでw
透明な、秋の空気のような・・・
みおさんの書くものは、本当に絵が見えます♪
これは、音楽も聴こえてきますね(〃▽〃)
ありがとうです~。
そういっていただけると嬉しいww
>さくらみるくさん
ホント、嬉しいですw
その言葉だけで、満たされる気がします~
ステキ♪