Nicotto Town


人に優しく。


白薔薇


六十歳で出稼ぎをやめて、郷里の八沢村に帰ることにした。

純子とはもう逢えなくなるから、最後の日に「新世界」に白薔薇の花束を抱えていった。

彼女の前に真っ直ぐ立って、「さようなら」と花束を渡すと、「ありがとう」と白薔薇に顔を埋めた彼女は、強い香りの中に閉じ込められたようだった。

悲しみが喉を突き上げたが、泣きはしなかった。





ー 『JR上野駅公園口』 柳美里 ー




 




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