Nicotto Town


人に優しく。


おばかさん


「リズ、気分が悪いよ」

「ほんとに、しょうがないわね!」

エリザベートは立ちあがったが、脚がしびれて、びっこを引いた。

「どうしてほしいの?」

「どうしてって……ぼくのそばにいてほしいんだ、ベッドのそばに」

ポールの目から涙があふれた。

幼い子供のように、唇をとがらせ、顔を涙と鼻水だらけにして泣いている。

エリザベートは自分のベッドを台所の扉の前に引っぱってきた。

弟のベッドとのあいだには椅子がひとつあるだけで、二人のベッドはほとんどくっついていた。

彼女はふたたびベッドに戻り、かわいそうな弟の手をさすった。

「まったく……」と姉はいった。

「おばかさんねえ。学校に行けないっていわれて泣くなんて。考えてもごらんなさい、あたしたち二人きりでこの部屋にこもって暮すのよ。白衣の看護婦をよこすって、お医者さんが約束してくれたわ。あたしはお菓子を買いに行くか、貸本屋に行くときにしか外出しないわ」





ー 『恐るべき子供たち』 ジャン・コクトー ー




 




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