Nicotto Town


あなたに会えてよかった♪


第23話(最終回1/2) 青空の行方~ゆくえ~ 

「あ…」

「拓海だよね…」

振り返るまでもない。
その声の相手は、沙也加だ。

「…今日はごめんな。ドタキャンなんて不義理なことしちゃってさ…」
振り返ると、街灯に照らされた、沙也加が逆光のシルエットで小さく手を振っていた。

「ううん いいんだよ。でさ、拓海…」
「うん…?」

「楓と、逢ってたんだよね?」

いきなり飛んできたブラインドからのゴールキック。これには世界一のキーパーだって反応できない。
拓海は驚いて、
「あっ… あ… 知ってたのか…?」
沙也加はちょっと寂しそうに肩竦め、くすっと笑った。

「拓海ってさ… ほんと、正直だよね…」
「それ、褒めてるのか?」

沙也加はすぐ笑顔を引っ込めて、拓海のほうにゆっくりと歩み寄る。
シルエットがだんだん大きくなる。
拓海は、その姿をやや呆然としながら見つめるしかなかった。

「ごめん拓海… あたしもさ…」
「うん…」
「一平と逢ってたの…」

「え?一平と…?」
意外な展開に、何と言っていいかわからずオウム返ししてしまう拓海。
どういうことなんだろう… その言葉が頭の中を何度もリフレインしている。





「俺さ、自分で言うのもなんだけどさ、女子人気あったんだよな」
「わかる。モテモテだもんね一平ってさ… 委員長みたいな真面目系女子から、イケイケ系女子まで満遍なくだもんね」
苦笑いして、沙也加の座ったベンチの隣に腰掛けると、一平は

「だからさ、俺、ずっと男の友達っていなかったんだよ」
「え…そうなの?」

「うん。ずっと一人だった。ギター関係でバンド組もうとしても、誰も俺と組んでくれないんだ」
「それって、やっかみだよね?」

「そうだろうな…でもさ、俺に何ができる? 何もできることってないだろ…」
「そ…そうだよね…」

「でさ、そんな俺に、この春、クラスで最初に声かけてくれたのが拓海だったんだ」
「…」
一平は、川面をきらきらと飛び跳ねるような陽光の反射に、ちょっと目を細める。
何となくその姿が寂しそうに、沙也加にはそう見えた。

「でさ、俺は『俺みたいな奴と関係あると思われると、お前までクラスの連中に白い目で見られるぞ?やめとけよ』って言ったんだよ」
一平はそう告げると、沙也加に視線を向けて、

「そしたらさ…」
「うん…」

「『なんでだよ?お前いい奴じゃん。そりゃ付き合い今までなかったけど、俺はお前がいい奴だってわかるんだ。何でって? そりゃ カンさ…』って、ケラケラ笑って言ってくれたんだ」
「そっか…なんか拓海らしいね…」

「拓海が友達になってくれたおかげで、沙也加もだけど、楓や健人、涼や由紀菜、結衣だってそうだけど、友達に慣れたんだよな…」
「うん…」
「だから俺は…」

一平は立ち上がると、
「拓海と付き合ってる、沙也加には手を出せないんだ… 最大限、思い伝えることしかできない」
「ぇ… そ、そうなんだ…」

「沙也加のその落ち込みって、拓海のことだろ?だからさ…、俺は励ますことしかできないんだ。なんだかんだけっこー辛いよ?」
背中を向けた一平は、そう告げると手を振り

「でもな 沙也加…」
「はい…」
「俺は沙也加が好きだ」
言い残して、一平は駆け出す。沙也加が何も言う暇を与えずに、駅に向かって。




「だからね、拓海…」
「うん…」

「あたしたちさ、幼馴染の仲良しに戻らない?」
(続く

アバター
2022/09/23 06:28
おお~? 沙也加ちゃんの真意は?
残り1/2が楽しみですね。
アバター
2022/08/06 01:38
話が予想の斜め上にいってます・・^^;

大団円楽しみに待ってますね(^^♪




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