Nicotto Town






学校を終え、帰り道。「さすがだぜえ、お前の天才っぷりは」
読書をしながら帰るリエドに話しかけているのはリエドの影だった。
「当たり前でしょう」既に陽は落ち、辺りは暗い。「今日こそ悪魔を召喚しないと」
その言葉に影は爆笑した。「あはははは!こいつまだ言ってやんのかよお」
リエドは影をキッと睨みつけると影は一瞬にして黙り果てた。リエドは影のことをヌーンと呼んでいた。
「私なら絶対できるわ」「お前なら意地でも召喚しそう」リエドの言葉に率直な意見を述べた。
「するわよ」そう言って歩き続ける。家までの間には一つの公園がある。
「ここでやろうかしら」そう言って公園の前で足を止め、中に入っていった。
そして近くに転がっていた小さな石ころを手にすると何やら円陣のようなものを書いていく。
円陣の中に模様だの文字だのを書いてあげくには錬成陣が仕上がった。
リエドは鞄から召喚に必要な道具を取り出すと、全て錬成陣の上に置いていった。
「今度は失敗するなよ」心配そうなヌーンの声にリエドは一度だけ頷いた。
リエドは錬成陣の中に入ると呪文のようなものを唱えていった。
その時、「はいはーい…、そこまでだ」リエドに棘が巻き付いていき、リエドは宙づりになる状態になった。
「何?!」いまいち状況がわかっていないリエドにヌーンは説明した。
「招かれざる客といったところか」「招けよ」ヌーンにツッコんだのは少女だった。
「さあてと、邪魔者は早めに消しとかなきゃね」少女はそう言って笑った。
「僕は成人、ヨロシクネ」そう言った瞬間少女の指が光った。「指輪?」そう呟いたとき棘の締め付けがきつくなる。
リエドの身体は棘のとげにより深く傷ついていた。悲痛に顔を歪めるが助けは来ない、そう思っていたとき。
「我を呼んだのは主だな」その声の主は黒い豹だった。「助かりたいだろう。我に命令しろ、早く」
リエドは初めて見る悪魔の姿に戸惑いを隠せなかった。が、「早く!」
その言葉に我に戻ったリエドは叫んだ。「あいつを喰って!」
それに満足したかのように豹は成人の方を見た。「主ノ命アレバ、誰ダロウト喰ッテ喰ッテ、喰イマクッテヤル!」
急に獣のような声を発すると成人に向かって突進し出した。成人はそれを嘲笑うようにして一瞥すると、
「ギート、来て!」と叫んだ。その瞬間、後ろの闇が切れ翼の生えたライオンが現れた。
指輪は先程より輝きを増している。見た目から考えても豹の方に勝算はない。
「ギート…」豹が呟いた。「アノ!」ギートと呼ばれた方は驚いたような表情を見せている。
先に動いたのはアノと呼ばれた豹の方だった。俊足で成人まで達すると指輪をつけている指ごと引きちぎった。
「あああああああああ!」成人の悲鳴が響き渡った。相当痛いようだった。
アノは落ちた指まで駆け寄ると指輪をくわえた。「核が…核が!」成人の表情が豹変した。
ギートの方は全く動かない。「ギート!どうして…、核が!」成人が喚く。が、ギートは動かない。
「主、済まない。アノに攻撃すると主を裏切らなくて済むが、悪魔界的に済まないのだ」
ギートがそう言った瞬間アノは核と呼ばれた指輪を噛み砕いた。その瞬間ギートは消え去った。
そしてリエドは吊していた棘も同時に無くなった。支えていた棘がなくなった瞬間セナリアは地面に叩き付けられた。
血まみれの身体が叩き付けられるのは痛いものだが、それ以上にリエドは驚きを隠せないでいた。
「どういうこと…?」目を丸くしたままリエドは問うた。
「悪魔界の掟だ。同じ種族の悪魔は自分より上位にいる悪魔には手を出せない」アノはそう言って近づいてきた。
「貴方の方が上位ってこと?」アノの頭を撫でているリエドは意外そうな顔をしていた。
「左様だ。我の種族の中では我が長だ」その言葉を聞いた瞬間「やっと成功だな!」影が声をあげた。
リエドも安堵の表情を見せた。「ー!痛…」自分の身体の傷をすっかり忘れていたのだ。
「ちょっとあんた」リエドは成人のを手招きした。成人は落ちた指をくっつけるのに夢中だったがそれに気が付き寄ってきた。
目の回りは泣き叫んだせいかすっかり赤く腫れている。「なに…ですか?」
既にギートがいないのを思い出し弱気になっていた。「あんたは生かしてあげてもいいわ」
その言葉に成人は表情は晴れ晴れとしてきた。「一つだけ条件があるけど」
再び暗い表情でこちらを見て「なんですか?」と訊ねた。「私の身の回りの世話をしなさい」
命令口調で言うリエドに少し躊躇っていたが、「はい」と小さく呟いた。
その言葉を待ってたかのようにリエドは「とりあえず病院まで連れって行って」と言った。




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