Nicotto Town



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西洋風の豪邸の夜ご飯は成人の作った質素なモノだった。
「こんなものしか作れないの?まあいいわ」リエドはそう言って料理を口に運んだ。
先程病院で全身を包帯で包まれたリエドは、自分の不格好さを見て成人に冷たくあたっていた。
当の成人も指をくっつけるのに一時間も時間を要した。そんなこんなで現在九時の豪邸は普段より一人と一匹多かった。
「まあまあ、たまにはいいじゃない」リエドの母ディアナは美味しそうに料理を頬張っていた。
リエドはため息をついてアノの方を見やった。やはり美味しそうに食べている。
「それよりその豹はどうしたの?捨ててあった…訳はないわよねえ」ディアナは心配そうな顔をした。
「ディアナには関係ないわ」リエドはまたも冷たく言い放った。
成人はディアナを見たが、ディアナはニコニコしたままだった。どうやら日常茶飯事らしい。
「つかぬ事をお聞きしますが、お父様は?」成人が訊ねるとディアナは笑って「いないわよ」と言った。
成人は本当にまずいことを聞いてしまったと思い周りの様子を伺うが変わりはなかった。
少しの間沈黙が流れたが、皿が空になったアノはそれを気にせずリエドの膝を二回ほど突いた。
するとリエドはアノと自分の皿を台所に片づけに行った。戻ってくるとアノと一緒に階段を上がっていった。
「私にも成人みたいな力が使えるようになる?」リエドの問いかけにアノは眠そうな身体を起こした。
「棘の能力のことか?」聞き返すとリエドは頷いた。「棘じゃないけどな」そう言うとアノはベッドに飛び乗った。
「この能力を使えるのは僅かな人間だけだ」アノはリエドを見た。
自分は使えるのかと息を呑むと「お前は大丈夫そうだ」アノから良い返事が返ってきた。
ディアナと話しているところの成人にリエドは階段から手招きした。
成人は適当なところで話を区切ると二、三回ディアナに頭を下げてリエドのところまで走ってきた。
そのままリエドの部屋に入ると、リエドは毛布のある辺りを指さしたのでそちらに座ることにした。
「どうかしたんですか?」成人が恐る恐る訊ねると、アノが口を開いた。
「汝は悪魔界について十分理解しているな?」その返事として成人は静かに頷いた。
「では説明しよう。悪魔には八柱と呼ばれる八人の長がいる。我もその一人だ。八種類の種族があるから、一種に一人の長がいる」
真剣に聞いているリエドから成人に視線を変え話を続けた。
「悪魔は全部で九十六いる。ギートのように指輪を破壊すると実像はなくなる。
もうすでに九の悪魔が虚像となったが、まだ十三の悪魔が召喚されていない。無論、虚像となってしまえば何度も召喚可能だ」
その言葉に成人は口を開いた。「つまり、僕はまた召喚できるってこと?」一瞬にして表情が明るくなった。
「そういうことだ」成人は拳を振り落としてうっしゃあと叫んだ。
「貴方も実戦力になるということね」鼻で笑いながら「今度は違う種族にして頂戴」と付け加えた。
気が付くとアノはベッドの上で眠り就いていた。リエドはため息をつくと「貴方何歳?」と聞いてきた。
「十六です」成人がそう言うとリエドはクローゼットを探り出した。
そして二着あるうちの片方を手に取り「貴方も明日から学校行くわよ」と言ってセーラー服を渡した。
成人は目を輝かせてお礼を言ったあとセーラー服を持ったまま毛布にくるまった。
幸せそうな顔をしている成人を見たあとリエドも眠りに就いた。




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