Nicotto Town



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「目を覚ましたのね」女の人の声が響く、慌てて身体を起こすと目の前に綺麗な女の人がいた。
「貴方は?」成人がそう訊ねると女の人は遠くを見ながら答えた。「朱美よ」
途端自分と成人の口に人差し指を開けて成人の後ろにある扉を見やった。
そして「私たちは囚われたの。何れ死んでしまうかもしれないけど」と口にした。
成人は唖然としたが、朱美は顔色変えずに「でも大丈夫」と言って髪を耳にかけた。
耳たぶには龍の形をしたピアスがついていた。「それって…」成人が訊ねようとしたが、朱美が遮った。
「悪魔よ。あいつはストラップが悪魔だと思って持っていったけど」そう言うとウィンクして成人を見た。
すると、そこに「あら、お目覚め?」奴が現れた。朱美は今までの明るい表情を曇らせてそいつを見やった。
「私はカルロッド。覚えなくていいわよ。あなた達今から死ぬんだから」そう言うと二人を無理矢理部屋から連れ出した。
そして成人を椅子に縛り付けた。朱美は後ろの悪魔に捕まえられて身動きが取れない状態でいる。
しかし朱美は成人を明るい表情で見つめた。成人の指に爪剥ぎ気が取り付けられる。
だが、朱美が悪魔を出すならもう少し成人に近い位置でないと人質に取られる可能性がある。
朱美も同じことを考えたらしく、思い切り悪魔の顎を肘打ちした。悪魔は呻き声をあげて手を離した。
が、再び朱美を掴もうと手を出したとき、朱美は思いきり回し蹴りを顔に食らわせた。
悪魔が怯んだ一瞬の隙をついて朱美は成人に駆け寄った。「濁龍!」朱美が叫んだ瞬間、ピアスが弾けて黒い龍が現れた。
「悪魔だと…!」カルロッドは驚いた表情をしたが、みるみるうちに笑みがこぼれた。
それを不思議に思った朱美が「濁龍、噛み千切れ!」と叫んだが、濁龍は身動き一つしない。
それどころか濁龍は姿を保てなくなっていき、身体が崩れていった。
「なんだって!」朱美は目を丸くした。「おーほほほおほほほほほ!まだ理解できてないのかしら」
そう言うと先程まで泥のような形をしていた悪魔を撫でた。
先程まで…、というのは今は既に戦士ジークフリートに変化している。
「彼の能力はね。悪魔の力を無効化する力があるの」そう言うとジークフリートは朱美を建物の外に出した。
「悪魔持っているんじゃない。悪魔を持ってる人に用はないわ」遠くからカルロッドの声が聞こえる。
ジークフリートに外に出された途端、濁龍は姿を元に戻した。朱美は目覚めてすぐ、カルロッドに話しをされていた。
朱美と成人をここに連れてきた目的は、悪魔界についての情報を持っている人で既に悪魔が消滅してる人を殺すためと。
再び入ればまた濁流は使えないが、このまま成人放って置くことはできない。
そう思って扉の前で躊躇していると、中から成人の悲鳴が聞こえた。耳と心臓が裂けそうなほどの叫び声だ。見捨てて帰るのは心が痛む。
そこに一人の少女がやってきた、碧髪隻眼でセーラー服を着ている彼女。そう、リエド・リディクローズだった。
懐中電灯で暗闇を照らしている。そして足下には黒豹のアノがいる。
「どうかしたんですか?」リエドは訊ねた。朱美は「いや、色々とありまして…」と言って頭を掻いた。
「その龍…」リエドが近づいてくると、朱美は意外そうな表情を見せた。
悪魔が見えるのは悪魔を召喚できる人だけ。それを知っている朱美はリエドに頼み込んだ。
「手を貸してください!」そう言ってリエドの両手を握ると必死そうな表情をした。
そのとき再び成人の叫び声がした。「…!成人…」リエドが扉に駆け寄っていこうとすると、朱美はその手をひいた。
「成人を知っているのね!」朱美の明るい表情をよそに手を振り払うと再び扉に向かった。
朱美のそのあとを追った。「待って!このまま入っても無駄よ」その言葉にリエドは足を止めた。
「無駄とは?」振り返って朱美の目を見る。「奴の悪魔は悪魔の能力を殺消する能力があるの」
朱美の説明を聞くが、似た単語が多くてあまりよく理解ができずにリエドは首を傾げた。
「結局成人はどこにいるの?」リエドのその質問に朱美は中の状況を話したあとに、成人の位置を伝えた。
するとリエドは何やらアノと作戦を立てだした。そして話し終わると解散してリエドはこちらに来て、アノはどこかに走っていった。
「その龍で入り口破ってもらってもいいかしら」朱美はリエドの背中越しに頷いた。
「濁龍!」濁龍は朱美の言葉と同時に入り口に突進していった。そして一瞬動きが止まると入り口が音を立てて崩れていった。
中にいたカルロッドもそれに驚いて爪を剥がす手を止めた。落ちた瓦礫の上をリエドは軽々と登って行き、頂点に立った。
一方、朱美は不安定なところにいるため落ちてきそうな身体と、風さえ吹けば見えそうなスカートの中とで気が動転していた。
何かを忠告しようと口をパクパク動かすが、声は全くと言っていいほど出ていない。
カルロッドはリエドの姿に気付きジークフリートに技の発動を促した。
すぐに構えに入り、近くにいた濁龍の身体が先程と同じように落ちていく。
刹那、入り口と逆方向に位置する壁が一瞬にして崩れた。それに一番驚いたのは半泣き状態の成人だった。
崩れたところにいたのはアノ。アノの身体はいつもの十倍もあり、成人を椅子ごと加えると、
両端の壁の損傷から崩れかけていた建物を飛び越えて、リエドの横に移動した。
カルロッドも建物の異変に気が付くとすぐにジークフリートを呼び寄せて、屋根が落ちると同時に外に出た。
既に外に出ていたリエドは椅子に縛り付けられている成人を解いてやった。
すると成人は何も言わずリエドに飛びついた。どうやら泣くのを我慢しているのか、何度も鼻を啜る音が聞こえる。
リエドは急なことに驚きはしたが、すぐに安堵のため息を漏らししょうがないなあと頭を撫でてやった。
近くで見ていた朱美は「一件落着かな」と苦笑した。傷ついている成人の指は一切見ないようにして。
不意に足音が聞こえた。そちらの方に目を向けるとカルロッドとジークフリートが歩いてきた。
ジークフリートは歩いているというよりは、浮いているのほうが正しいだろう。
「次は殺してやるよ。覚えてな」成人にそれだけ言うと去っていった。




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