Nicotto Town



目が覚めたら牢獄の中だった。辺りは暗くてよく見えないが自分の他に人がいるようだ。
男子は自分を合わせて三人、女子は二人の計五人。皆倒れている。
他の人を起こしに行こうとすると足が動かない。足を見てみると足枷がついていた。
足枷をどうにかとれないかと衝撃を与えてみるがとれそうもない。足枷は鎖に繋がれて地面の鉄板に括り付けられていた。
よく見てみると何やら文字が掘られている。「契…?」その声に反応するように一人が身体を起こした。
そして声に近づこうとしたのかこちらに来る途中で躓いたようだった。
「何これ…」どうやら同じく足枷がついているらしい。「足枷だよ。俺にもついてる」そう言うと煩わしそうに苦笑した。
「なんか書いてある!…壱?あたしの名前かなあ」その言葉に反応した。
「俺の名前ってなんだ?」俺が不思議そうな顔をしていると小さく返してきた。「なんて書いてあったの?」
「契」短く返すと「じゃあそれが名前だよ」そう言って壱は微笑んだ。
自分が本当に契という名かはわからないが、名前を思い出せないのは確かだった。
「どこだここ?」そのとき違う方から声が聞こえた。その方向に目をやるとまた一人起きあがってきた。
「わからない」契がそう返すと「なんだこれ!煩わしいっ」元気な漢らしい声が聞こえた。
どうやらその男にも足枷がついてるようだ。「なんか書いてある?」壱がすぐに飛びつく。
男は足枷を隅々見て、「扇子?」と呟いた。壱は顔を明るくして「扇子ってかっこいい名前だね」と言った。
扇子は顔を顰めて俺の名前じゃないと抗議したが壱は扇子と決めつけて聞かなかった。
「なんだなんだあ」再び男の声が聞こえた。扇子はその方向を見て「まだいたのか」と呟いた。
俺は一応教えておこうとあと一人いることを教えた。男は俺の近くで唸っていたので俺は近づける限り寄ってやった。
するとどうやら足枷が足に合っていないようで締め付けが酷いらしい。「痛ええええええ!」
牢獄は鉄で出来ているためよく響いた。「五月蠅いなあ」扇子が横目で見る。
「じゃあお前も体感しろ」男は扇子を睨んだが暗闇の中じゃあ扇子まで届かなかった。
「ん、何か書いてあるぞ…、塩飽?」男がそう言うと壱は契の顔を見て「塩飽はちょっとやだなあ」と呟いた。
契は愛想笑いを浮かべて同感したが、周りの様子がよく見えない。四人は出来る限り中心に陣取った。
何か覚えてることはないかと話し合いをしてるうちに辺りが明るくなってきた。四人の顔がよく見える。
「あれ…!」塩飽が契の後ろの方を指さした。一斉に振り向くとそこには小さな窓があった。
「これから漏れた光か!」そう言うと扇子は立ち上がり窓に精一杯手を伸ばす。
が、足枷が邪魔で窓まで届きそうにない。「これを割ればでれるだろうなあ」そう言って再び座り込んだ。
明るくなって辺りが見えるようになったが、どうやらここは個室らしい。
牢獄を出てすぐに扉があるが、扉は開けっ放しだった。そしてその扉の横に椅子がある。
壱もそれに気づき椅子を見ている。「あれ…指輪?」壱は呟いた。
契も椅子の上を見ているとどうやら指輪のようなものが二つほど置いてある。
壱は目を輝かせて指輪を見ていた。すると何かが動く音が聞こえた。
最後の一人が起きあがったのだ。「遅いぜ」塩飽が待ちわびたかのように声をかけると、こちらを一瞥して「誰」と言った。
「うお、直球」それを見ていた扇子は率直な感想を述べた。女の子は足枷を全く動揺せずに見つめていた。
それより何故自分を中心に集まっているかの方が不思議そうだ。
たまたま四人は四方に括り付けられていて、真ん中に彼女がいたからなのだが、彼女は不服そうな表情を見せた。
壱は眠そうな目を擦っている彼女に近づいて足枷の文字を見た。「離鳴!」そう言うと彼女は驚いた顔をして壱を見た。
壱はえへへと笑うと今までの説明をし始めた。そして次に他のみんなの紹介までしてくれて最後に「君の名前は離鳴」と付け加えた。
離鳴は興味無さそうに見ると再び身体を床につけた。それからも色々と話していたが、夜を明かしたせいか気が付くと睡魔に襲われていた。
契が目を覚ますと既に壱と扇子と塩飽は談を組んでいた。陽はもう南中し終えている。
離鳴は変わらず床にべったりなため、まだ寝ているのかと勝手に解釈した。
「そんなに寝てなかった?」太陽の方向を見ながら契は聞いた。すると扇子は「もう一日経っただろ」と笑いながら言った。
確かにそれくらいは経っただろうか、不意に誰かの腹の鳴る音が聞こえた。
目の前にいた壱が腹を押さえたため、すぐに彼女の音だとわかった。
壱は顔を赤らめて周りを見回したが、他の二人はどうやら気付いていないようだった。




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