Nicotto Town



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「おはよー」相変わらず元気な裄の声が響く。登校は裄と成人とリエドの三人が基本となっていた。
しかし成人は人見知りらしく、あまり裄と話そうとはせず、常にリエドの背に隠れている。
おかげで裄はすっかり嫌われているのもだと解釈している。
ふと裄はあるものに気が付いた。成人の右手の親指以外と左手の小指にされている包帯。
怪我でもしたのかとリエドに訊ねるが、リエドは「知らない方が得なこともある」と返してきた。
裄の頭に疑問符が浮かぶまま、三人は学校についた。三人の登校に全校生徒が注目するのはそろそろ恒例行事となっていた。
リエドと成人は男女ともになかなか人気が高く、常に一緒にいる裄が非難の目で見られているのも確かだった。
しかしリエドの天才ぶりもかなり評価が良く、教師を貶める度にうるさいほどの歓声があがる。
そんな中裄は机の周りをチェックし、中に手を入れたところでため息をついた。
それに気付いたリエドが振り向く。「ため息つくと幸せ逃げるわよ」
真面目な顔で忠告するリエドを見ていると、先程の鬱もどうでもよくなる。
「そうだね~」デレデレしながら話す裄を一瞥すると再び前に視線を戻した。
「今日もやってくのっ?」成人がリエドの元へ走る。裄の見たことの無い笑顔と一緒だ。
他の生徒も成人の笑顔は初めて見るようでなにやら「可愛い!」などの声が聞こえる。
「いいわよ」リエドは教科の準備をしていたため軽く流したが、成人はとても嬉しそうだった。
裄はリエドのセーラーの裾を掴むと「どこかに寄るの?」と訊ねたが、リエドは人に詮索されたくないらしく「別に」と冷たかった。
どこか行くなら一緒に行きたかっただけなんだけどなあ、と思ったが、リエドは元々こういう人だ。
今日の時間の流れはいつもより速く感じた。気が付くと放課後だった。
帰りの号令の後リエドと成人はすぐに教室を出た。朝話していたようにどこかにでかけるのだろう。
「いいなあ」校庭で大活躍の野球男児たちを見ながら裄は呟いた。




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