Nicotto Town



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契と離鳴の対応に追われながらも、今日の授業も無事終了を迎えた。
今日は退院なので、しょうがなく二人を病院に連れて行くことにした。
病院に入ると「騒ぐな」の一言だけ言って、成人の病室に入った。
その瞬間リエドは目を疑った。もう既に病室は綺麗に片付き、人の姿は見当たらない。
「先に帰ったのかしら…」念のためナースステーションに寄り、確認すると看護士は「先程女の子と一緒に出て行きましたよ」
と丁寧に教えてくれた。「女の子…?」リエドが考えていると、後ろから「彼女ですかね?」と声がした。
そんなわけないとその場を取り繕ったが、こんな短時間で彼女ができるわけがない。
近くにいる人に少女を連れた男を見たかと伺うと、多くの情報が得られた。
その情報に従い、その近くまで行って更に人に尋ねる。なんとも効率が良いのだろうか。
「姐さん、さすがですね!惚れます」それに感心した契もつい感想を述べた。
隣で見ていた離鳴はその言葉に嫉妬するように契を見つめた。
以前喧嘩したときに契が「俺は姐さんが好きだ、ごめんな離鳴」と言っていたことを思い出すと少し虚しくなった。
が、離鳴とてリエドは大好きである。契の言葉は確かに同感だ。
そうして尋ねていき、辿り着いたのは一棟の廃れたビルであった。
「本当にこんなところにいますかね」離鳴が心配そうに聞く。「いる可能性もある。念を入れて悪魔を出す準備を」
リエドのその言葉に二人は核のある方の手を強く握った。「姐さんの悪魔は?」
契がアノがいないことに気付く。「呼べば来るわ」そう言ってビルの入り口へ進んでいった。
ビルは現在全く使われていない形跡があり、扉も錆びていた。
重い扉を開き、中に入ると日の光が遮断され、急に薄気味悪く感じる。
しかし、埃だらけの床に微かに足跡があるように見える。それに気付いたリエドは足跡を追うことにした。
足跡は階段へと向かい四階まであがったところで廊下に続いた。そちらに向かおうとした瞬間、ゴドッ、大きな音が響く。
その音が鳴った部屋へ三人は近づいた。普通の事務所の扉のようで、リエドは開けるのを躊躇ったが、契が後押しした。
そして、開けたところで三人が見たのは、無惨に堕ちた成人だった。「成人!」リエドが成人に駆け寄る。
チッと舌打ちが聞こえたのでそちらを見やると、目撃人の証言と同じ少女が立っていた。
片手には血だらけの斧を持っている。そして左手の小指には核が。
それに気付いた契と離鳴も構えるが、リエドは手の平を見せてストップを要求する。
二人はそれに素直に従い、構えを解いた。刹那、二人は何かに思い切り飛ばされた。
軽く飛んだ二人の身体はリエドの頭を掠り、壁に衝突する。リエドが二人の飛んできた方向をキッと見ると、
そこには絵に描いたような美しい女性の姿があった。「片付いたかしら」女性はそう言うと少女の方へ行く。
そして成人を見ると「まだ息があるのね」そう言って少女を見た。
「リャナンシー、思った通り。邪魔が入ったわ。でも八柱がいないの!」感嘆の声をあげると
リャナンシーと呼ばれた女性がリエドに近づき、顎を掴みあげる。
しかし、何かが当たり手を引っ込めた。「姐さんに触るな!」契が落ちていた木くずを拾いあげる。
それを見て退いたリャナンシーからリエドは成人を遠ざけた。体重が増えてる分、あまり動かせなかった。
リエドはすぐに成人の上に両手を翳した。それを見たリャナンシーが呟く。「簪、やばいわ」
それを聞いた瞬間、簪と呼ばれた少女が落ちていた斧を拾い上げてリエドに迫る。
リエドはそれを一瞥すると、またすぐに手に意識を集中した。簪は口元に笑みを浮かべ、その場を大きく蹴った。
契がリエドの前に出ようと立ち上がったが、それは既に遅かった。「邪魔者は死ねえええええ!」
簪は狂ったように斧を振り下ろした。手応えを感じ、天井を仰いで高笑いする。
しかし、悲鳴が聞こえないのが不服だったのか、すぐに視線を落とした。
「…っ!てめえは!」驚いたように目を丸くし、斧の先を見据える。
そこにあったのは漆黒の豹、アノの姿。斧を鋭い牙でしっかり受け止めている。
後ろではリエドが既に回復を開始していた。「八柱か…、リャナンシー!」
豹変した簪は睨むようにアノは見た。しかしアノの異様な雰囲気に呑み込まれ、簪は一歩後退する。
アノは下がらせまいとくわえていた斧を真っ二つに噛み折る。簪は斧を手から放し、地に落ちて大きな音を立てた。
近づいてきたリャナンシーの後ろに隠れると、そっとこちらを見る。
リャナンシーは華麗な足取りでアノに近づいてきた。「相変わらず美しいな」アノが久しぶりに目にした感想を述べる。




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