Nicotto Town



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「ありがとう。そういう貴方、大好きよ。ここでサヨナラは少し、寂しいわね」
そう言うとリャナンシーはアノに片手を向けた。それと同時にリエドは成人の傷を生成して契と離鳴の近くへ移動した。
それを見た簪は壁の近くにあった鉄パイプを拾い、四人のところへ近づく。
リャナンシーは手から大きな竜巻を起こしてアノに向けた。が、簡単には当たらず、アノは部屋の外へ飛ぶ。
「簪、こっちはまかせたわ」そう言ってウィンクを投げると、リャナンシーはアノを追いかけた。
簪はリャナンシーが部屋を出るのを見届けると、「ですって」と皮肉な笑いを浮かべた。
「残念だなあ。アンタは壊されるよ」離鳴が残念そうに見ると、簪はまたも高笑った。
「あははははは!可笑しいわ!あたしが壊される?なんのご冗談を!」「狂ってる」
契は一言そう言った。それに対して簪は態度を豹変させて、契を鋭く睨んだ。
「あたしはお兄ちゃんの仇の為ならなんだってするわ!腕が千切れようと首がもげようと、そいつを殺す」
そう言って横たわっている成人を指さした。リエドは成人を抱いたまま首を傾げた。
「仇…?」「そうよ、そいつがあたしのお兄ちゃんを殺したの」鼻で笑うと鉄パイプを振り上げた。
「勝算があると思ってるの?」離鳴が小指の核をちらつかせて簪を見る。
簪はそんなものは関係無いというように、鉄パイプを振り上げたまま突進してきた。
「やる気だ」契はそう言うと離鳴を見た。離鳴は頷くと、「タナトス!」と叫んだ。
四人の目の前が暗くなる。それを利用した離鳴は「姐さん、その人を連れて行ってください」と逃走を促す。
リエドは少し躊躇ったが、成人を見たあとに頷いて立ち上がった。
大分普通の中肉中背より大きい成人だが、リエドは軽々とお姫様だっこをして走り去った。
それを見ていた契と離鳴は歓声をあげる。しかし、簪はタナトスの召喚しにも動じず、走っていくリエドに小型ナイフを飛ばす。
髪を掠め壁に突き刺さるナイフに目を丸くし、リエドは振り返る。
殺意に満ちた眼差しでリエドに大きく蹴りを入れる。簪タナトスの前で急な方向転換をしていた。
成人を抱えていたリエドは無理に避けることもできず、捩れた身体に思い切り蹴りが入れられ、激しく壁にぶつかった。
壁にヒビが入り、壊れた壁がリエドに被さった。予想外な簪の行動に固まっていた離鳴と契もようやく後ろまで移動してきた。
が、簪はそれを一瞥すると、すぐにリエドの方向に足を進める。しかし途中で足を止めた。
前にタナトスが立ちはだかったのだ。「さっき言ったわよね?"勝算があると思ってるの?"って。その台詞、そっくりそのまま返すわ」
背を向けたままの簪が言った。やはり、負ける気は無いらしい。「タナトス、そいつを噛み千切って!」
その言葉と同時にタナトスは大きく口を開け、簪に迫った。そして噛みつこうとしたとき、口に何かが挟まった。
「鉄…くず?」離鳴が呟くと、鉄くずが飛んできた方向からリャナンシーが現れた。
「リャナンシー!愛してるわ」簪はリャナンシーに笑顔を見せる。リャナンシーも微笑むと、
「強い貴方も好きよ」と言ってタナトスの前まで移動する。それを追ってきたアノも姿を見せた。
もう既に身体はボロボロのようだ。「まだ動けたの?しぶといわね」
リャナンシーは軽くため息をつくとタナトスを挑発するように中指を立てた。
「殺したいでしょ?いらっしゃい」そう言うとアノの方へ駆け出す。
それを見ていたタナトスは挑発に乗って、リャナンシーを追いかけた。
「タナトス!」離鳴の言葉にも耳を貸さず、猛スピードで追いかける。
「二対一なら大丈夫だ、きっと」契は離鳴の肩に手をかけて簪を睨んだ。
「リャナンシーは強いわよ」嘲笑う簪の背を見たまま、リエドは周りの鉄くずを払って立ち上がった。
「少しの間、ごめんね…」そう呟いて成人をその場に降ろすと、指を何度も鳴らした。




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