Nicotto Town



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それに気が付いた簪は振り返るとそうでなくちゃと呟いてリエドを見た。
「俺らを無視すんなよ」契は皮肉るように笑うと、親指で自分を指さした。
リエドがそちらを見ると、離鳴も静かに頷いた。簪は振り返り、「あんたらは何もできない」
生気を無くしたような瞳を向ける。それが自分の全てを見ているようで、二人は少し動揺していた。
「ほらね…、っ?!」簪が振り向いた途端、強烈なパンチが顔に飛んできた。
「油断禁物」リエドはそれだけ言うと壁に飛んだ簪との間合いを詰める。
そして起きあがろうとした簪にタックルをかます。「姐さん、格闘系なんだあ…」契が少し嬉しそうにリエドを見る。
「強い女が好きなの?」離鳴が鋭い目を向けて訊ねる。「な、なんだよ…」「別に」
離鳴はツンとして視線を外す。契が頭に疑問符を浮かべていると、リエドに動きがあった。
二人を巻き込まないようにしたいのか、簪にタックルをした後、アノたちがいる方と逆方向に大疾走した。
簪も痛そうに頭を抱えて起きあがると、リエドを追う。契と離鳴ももちろん後を追った。
非常階段の扉を開けると階段を二段飛ばしで駆け上がっていく。付いたところは廃ビルの屋上。
ついてきた簪は息切れをしていて、膝に手をついて肩で呼吸を繰り返した。
リエドは疲れた表情など一切せずに、簪を見下した。そしてデコピンの形を作ると簪の額に向けて一発食らわした。
軽い衝動に簪が笑みを浮かべた瞬間。簪の身体は軽々と浮いた。「なっ!」目を丸くしてリエドを見るが、リエドは身動き一つしない。
契と離鳴が階段を上がった来たときには、簪は屋上の囲いから外だった。「なんで…」簪はそれだけ呟くと、地面へと落下して行った。
リエドは冷たい瞳で二人を一瞥すると、「成人をよろしく」と言い残して階段を降りていった。
リエドは下まで繋がっている階段を降りると、堕ちた簪の元へと歩み寄る。
「…強いね」頭からかなりの血が出ているが、まだ意識があった簪がリエドの頬に手を伸ばす。
「核は頂くわ」そう言うと簪の指から核を抜き取る。「顔、近づけて…」簪の小さな声が聞こえる。
「死人とキスは丁重にお断りするわ」「そんなこと言わないでよ」寂しそうに笑うと、簪はゆっくりと頭を上げた。
リエドの唇に優しくキスをすると目を閉じた。「死人とは嫌って言ったのに」
そう言って簪の元を離れると、適当な大きさの石を拾って核を壊した。




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