Nicotto Town



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「…!」今まで眠っていたアノが急に目を覚した。嫌な夢を見た。リエドが攫われる夢だ。
床に転がって漫画を読んでいた契と離鳴はアノに視線を向ける。
「…嫌な夢を見た」漆黒の毛皮の中に真剣な眼差しが見える。離鳴は身体を起こした。
それに続いて契も読んでいた漫画を置く。「どんな?」離鳴が興味ありげに聞く。
「嫌な夢だ」その答えに興味無さそうに契が言う。「それさっきも聞いた」
アノはハッとすると、「リエドが攫われる夢だ。"悪魔に喰われた人"、氷に攫われた。」と深刻そうに言う。
「でも夢だろ?」契は再び漫画を読み出した。「だと良いのだが…」
そのとき、ディアナの昼食の準備が出来たと言う報告が入る。「いこっか」離鳴はアノを何回か撫でると部屋を後にした。
契とアノもそのあとを追って一階に下りた。「あれ、リエドと成人ちゃんは?」ディアナがアノを後ろを見る。
「散歩です!」離鳴はそう言うと良い香りのする食事の席についた。ディアナはまだ成人が女だと思っている。
アノはテーブルの麓まで歩いてきたが、考えた末目の前で踵を返すと玄関に向かった。
ディアナは朗らかな声で「お迎えに行ったのかな?」と言ったが、離鳴と契は心配そうな顔をしていた。
「悪い予感がするってやつ?」そう言うと食事を一気に食べた。「ウチも迎えに行ってきます」
離鳴は元気な声で敬礼すると玄関に向かった。「あ、ちょっと!」契もそれを追いかけた。
ディアナはあらあらと残っている食事にラップをした。そのとき、玄関のチャイムが鳴った。
「あら、忘れ物かしら」早速玄関に向かうと、ドアがいきなり開いた。
やはり誰かの忘れ物かと開いたドアを見ると、「あら。どちら様ですか」そこには背の高い女性がいた。
髪が短く、漆黒のドレスを纏っている。「リエド・リディクローズさん、居られますか?」
女性は中を覗き込むようにして見る。「さっき出掛けたんですけどね、もうすぐ帰ってくると思いますよ。中でお茶でもどうぞ」
ディアナは女性を誘うように中に手招きしたが、「結構です」と断られた。
「私は彼女の不在宅を確認するよう仰せつかっただけなので」そう言うとディアナに背を向けた。
ディアナは首を傾げて、「どういうことですか?」と訊ねたが、女性は振り返ることなく歩いていった。
途中で足を止めると、「そういえばまだ名を申してませんでしたね。私は蝶乱です」それだけ言うとそのまま去った。
ディアナはその名だけ頭の片隅に置き、家の扉を閉めた。




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