Nicotto Town



意識を取り戻した瞬間頭に物凄い痛みが走る。両手もかなり痛む。
目を向けると、杭で壁に打ち付けられていた。大量の血が壁をつたい、床に流れている。
腰より下が床についているため、手にかかる負担は少なかったようだ。
身体の様子を見てみると、着ていた服は全て脱がされており、バスタオル一枚にくるまっていた。
状況を把握するため周りを見渡すと一メートルほど離れたところに成人も同じ状態でいた。
「…成人」誰かに気付かれないように、最小限の声で成人を呼ぶ。
成人は既に意識があったらしく、その声に反応してこちらを見た。
精一杯の笑みを浮かべ、無事だということを伝える。
不意に足音が耳に入る。不安そうな表情を浮かべ足音がする方を見ると、一人の女性が現れた。
「目ぇ覚めたんじゃねえか」顔をあげるとそこには純血の色をした髪、瞳を持ち得た女性が笑みを浮かべている。
一言で言うと野性的、なのだろう。口には煙草を銜えている。とても綺麗な女性だ。リエドはすぐに視線を逸らした。
女性はリエドに近づき髪の毛を鷲掴みすると自分の方を向かせる。「あたしは雁」丁寧に自己紹介をするが、
リエドは何も見てないような…けど全てを見ているような、とにかく虚ろな目をしていた。
これから自分に起こることを理解し、絶望したというのが早いだろう。
雁はそれが気に入らなかったらしく、煙草をリエドの腕に思い切り押しつける。
リエドの目は絶望に染まった。「熱っ!…い、痛い」雁は鼻で笑うと壁に思い切り頭を叩き付けた。
リエドは声を出そうにも力が入らなく、口を動かすだけだった。
そして雁は壁際にあった錆びた鋏を手に取ると、再びリエドの髪を鷲掴みにする。
雁がリエドの髪に鋏を入れようとしたところで成人が口を挟んだ。「待て!」
成人の方に顔を向けて、邪魔というような表情を見せる。
「髪を切りたいなら、俺のを切れ!」渾身込めて言うと、雁が鋏を床に置き、成人に近づいてきた。
「は、何言ってんだお前。あいつの髪が目障りなんだよ」そう言うと成人の鳩尾に一発お見舞いする。
「はいはーい、そこまで」全身黒ずくめの氷が部屋に入ってきた。
雁はそれを見て舌打ちすると、取り出した煙草に火を付けた。
「だってこいつらなあ、俺に反抗するんだぜ?」今までとは一転し、可愛こぶった口調で話す。
が、男勝りな話し方なのがミスマッチである。「お仕置きせなあかんなあ」
氷は爽やかな表情を雁に向けながら手でシッシッと除け者扱いをしたので、雁はとぼとぼと部屋を出て行った。
雁が部屋を出て行ったのを確認すると、氷は黒い笑みを浮かべてリエドに近寄った。
「アノの居場所教えてくれるんやったら、解放してやるで?」そう言うとリエドの首筋に手を這わせる。
「家にいるわよ」リエドはアノなら勝てると確信して、真実を伝えた。
しかし、氷は表情を強ばらせると、「家にはおらんて」と言うと首を思い切りしめる。
リエドが悲痛に顔を歪めるが、少しすると手を放した。リエドは激しく咳き込み、
「家にいないなら、本当にわからないわ…」もう何を言っても無駄だと思い身体の力を抜いた。
しかし氷の行動は予想外のものだった。「ほんならこのまま拘束させてもらうわ。きっと来るやろし」
そう言うとリエドの両手の杭を抜き始めた。「痛かったやろお」移動して成人の手の杭も抜くと「ほな」と言い残し出て行った。
杭によって塞き止められていた血が一気に吹き出る。なんとかバスタオルで血を止めようとするが、すぐに赤く染まる。
「こっち見たら許さないわ」リエドが顔を赤くして、成人に背を向けるとバスタオルを剥ぎ取った。
「ちょ…!」成人は赤面し、なんとか自分の置かれている立場に戻ると、タオルを傷口に当てる。
「逃げようか」成人は背を向けているリエドに話しかける。
リエドはそのままの状態で少し考えていたが、「死ぬわよ」と言うと黙り込んだ。




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