Nicotto Town


ぷち☆さちねこ日記


星の魔法少女~誕生物語~ 【その2】


 「・・・こんばんは、お嬢さん。お会いできて光栄です」
 
 屈み込んだまま、あっけに取られた表情で、声がする方へと顔を上向ける。
 するとそこには、柔和な笑みを浮かべて佇む、一人の女性の姿があった。

 黒い髪、黒い双眸、黒いドレス。
 色だけ見ればこの夜闇に溶け込んでしまいそうだが、肌は雪のように白い。

 澄んだ美しい声といい、その雰囲気といい、まさに「美人」と言うべき女性だ。

 「あ・・・あの・・・貴女は・・・?!」

 黒猫が女性に姿を変えたということだけでなく、その目を射るような美貌により、私の混乱はピークに達していた。
 どうにか声を発したものの、それはどこかありふれた問いにしか、形を成さなかった。

 「私は――」

 女性はそう言いながら、ぽかんと屈み込んだままの私の手を引いた。
 彼女とあまり変わらない目線になったところで、その続きを口にする。

 「星の神官様の使者、ポーラです。このところ私は、神官様の命を受け――星や星座に詳しい方を、探していました」

 そう言い終えてにっこりと微笑むさまは、まさに「それが貴女です」と代弁しているのだろう。

 「ああ、もうすぐ、神官様との疎通の扉が開きます・・・! どうかこの時だけでも、神官様の話を聞いてくださいませんか?」

 首輪から大きなポシェット風時計へと変化した文字盤を見ながら、ポーラと名乗った女性は、少々慌てたように言った。

 「この傘が、疎通の扉になっているのです。さあ、どうぞ、この傘の内側を、よーく見ていてくださいね・・・?」

 私が返事を挟む隙もないまま、ポーラは嬉しそうに、手に持った傘をくるくると回し始めた。
 それも、私から傘の内側が見えるように・・・。

 回し始める前の一瞬、その内側には、様々な星座が描かれているのが見えた。
 まるで今いる丘の夜空を、切り取ったようにも錯覚する。

 チャラ、チャラ、チャリ・・・ッ。

 傘の淵の装飾が、鈴の音のような音を響かせる。

 視界はまるで、星が流れて回転するよう。
 耳には、澄んだ音が徐々に反響してくるようで――。

 ハッと意識が戻ったような感覚の後、私の前には微笑むポーラと、その傘の内部に写った、一人の人物が見えていた。

 「こんばんは、はじめまして。貴女が、ポーラが選んだ星の少女ですね」

 傘の中の人物は、そう言ってどこかあどけなく、無邪気に微笑んでみせた。
 

  (つづく)





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