星の魔法少女~誕生物語~ 【その3】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/09/26 20:25:52
ポーラに「神官様」と呼ばれたその人物は、私よりだいぶ幼い子どものようだった。
しかし声にはまだ高さが残り、男か女か、見た目だけでは正直、推し量りづらい雰囲気がある。
「選ばれし星の少女よ。そなたの豊富な星の知識を見込んで、そなたを『星狩』――『星の魔法少女』として、我直々に任命したい」
――そしてその経緯や理由も、同じように。
私には推し量りづらいものだった。
「・・・あ、あの・・・。星、かり・・・?星の魔法少女??」
口元を引きつらせる私を見かねてか、神官様が映る傘の後ろから、ポーラが声を発した。
「貴女たちの世界には、『流れ星を見ながら、願い事を3回唱えると・・・』っていうおまじないがありますよね? あれは、本当に叶うのですよ。私たちは、少しでも多くの人にその現象が起こせるよう、監視・管理をしているのです」
あまりにも信じられない話にぽかんと口を開けてしまっていると、再び、神官様の幼い声が聞こえてきた。
「最近我々は、誰にも見られることのなかった流れ星を回収し、再び、人の目に付きそうなところへ流すという技術を会得した。空を見上げることが少なくなった今の人間には、何も利がない・関係がないと言われそうだがな」
そこで神官様は、ちょっと困ったように、悲しそうに、わずかに眉根を寄せて笑ってみせた。
「しかし我々は、この宇宙がつづき、地球に暮らす人間たちがいる限り、少しでも『希望』を増やしてやりたいのだ。役目のために生き、今いる宮殿から到底動くことのできない、私の唯一の楽しみは・・・何よりも、幸せそうに、嬉しそうに笑う、人間の笑顔なのでな」
そう、最上級の笑顔を添えて締めくくった神官様は、おもむろに右手を上げた。
するとたちまち、その手のひらの中に白い光が凝縮しはじめ・・・ある瞬間に、パッと弾けた。
「?!」
私が目を開けると、その右手には、大きな白い羽ペンが握られていた。
それは、携えている人物よりも、大きいのではないかと思われるほどで・・・。
しかし当の本人は意に介するふうもなく、その羽根ペンで、真正面に向かい、術式を綴り始める。
「――選ばれし星の少女よ。そなたにはその知識を活かし、天空から降り注ぐ『零れた星』を、我々のために拾う手伝いをして欲しい。人間たちの、幸せな願いを叶えるために・・・」
そう言い終えると、神官様は何やら呪文を唱え始めた。
不思議なペン先で描かれた術式たちは、よくよく見ると、どれも星座を結ぶ軌跡らしく。
私は小さく、感嘆の息を漏らした。
光りながら宙に浮かぶその軌跡たちに、語りかけるように唱える呪文には。
私が知っている星座の名前も散りばめられていた。
――悪意しか見えなかった世界に、ぱあっと、白い光が差すようだった。
(私が、選ばれた。私にしか、できないことがある・・・!)
それが、例え他人が聞いたら、信じられないことだったとしても。
私は、嬉しかった。誇らしかった。
そして何より、わくわくしたのだ。
世界は、暗く、悪意に満ちたものだけではない。
きっと、明るく、前向きな心も見せてくれるのだ。
そう。回転し、凝縮した術式の光の中から現れた・・・このロッドがあれば。
私は、あらゆる部分において変われるはずだ。
【つづく】