星の魔法少女~誕生物語~ 【その4】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/09/27 20:29:44
それから私は、黒猫姿になったポーラと一緒に、「星狩り」――「星の魔法少女」として、人知れず落ちた星を拾い集めている。
星が、誰にも知られず落ちて来ているように。
私も、星の魔法少女になったなんてことは、誰にも知られていない。
学校ではもちろんのこと、一緒に住む家族にだって秘密だ。
ポーラのアシストで、「次は、あの星座のあの方角から」「次は、あの星座の○○の辺りから・・・」。
そんな指示を聞きつつ、私は夜の街や丘を、走り、跳んで――落ちてくる星に、不思議なロッドを近づける。
たまに、手のひらへふわりと舞い落ちてくる星もあるのだが・・・
そういう星は、間近であたたかい光と、ほのかな温度を感じられる。
ロッドに近づいた星は、あっという間に先の球体のような部分へと吸い込まれ、しばらくその部分に、キラキラした光を残す。
その光に思わず見とれていると、すぐ傍から、ポーラの声が飛んで・・・
ふと、我に返るのだ。
流れ星たちを管理する神官様の力で、「星の魔法少女」になった私。
指示された方角へ走りながら、改めて思う。
普段の自分では、絶対にしない髪型。透けそうで、ヒラヒラしたミニ丈の服。
流れ星を見つけるために、良くなった視力。速くなった足。
そして、自分の身の丈ほどもある長いロッドを、振り回せる腕力と俊敏力・・・。
自分の見た目も能力も、普段とはまるで別次元だ。
しかし心だけは、普段と変わらず、同じものが通っている。
神官様に出会い、ポーラとともにこの任務をするようになってから――私は変わった。
周りの悪意に、いたずらに飲み込まれることがなくなったのだ。
心の持ちようで。ほんのちょっと、無理してでも作る笑顔で。
自分が変わることで、周りが変わることもあるのだということを実感した。
「次はあっち!カシオペア座の方向よ!」
私の左横を走っていたポーラが、空を見上げて声を張り上げる。
「わかった!さあ、あれを拾えば、今日はちょうど100個目・・・!」
後半はそう呟いて、私は一段と、走るスピードを上げた。
* * * * *
――もし、夜空で流れ星を見かけたら。
私たちが捕まえた、「2回目の星」かもしれないけれど。
どうか、願い事を唱えてください。
その後あなたに訪れるであろう幸せな笑顔は、私たちの幸せでもあり、励みにも、なるのですから・・・。
【終】