星の魔法少女【外伝・ほしをつかさどるもの】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/10/10 20:14:08
「・・・久しぶりね、アルタイル。無事に、星の魔法少女が見つかったそうで・・・私も安心したわ」
ポーラとの通信を切った後、ふいに、自分の後ろから女性の声がした。
優しく、美しく、懐かしい響き。
こんな風に自分の名を呼んでくれるものは――この世界には、もうたった一人しかいない。
「お、お久しぶりです!ベガ姉様・・・!!」
わたしは嬉しくて、後ろに立っていた姉の元へ、全速力で駆け寄った。
姉は両腕を広げ、笑顔で、まだ小さいわたしの体を優しく包み込む。
「これできっと、願いを叶えることができる人間の数も増えるでしょう。私も・・・これからたくさん、星を作ったり、呼び集める甲斐があるというものです」
少々うっとりと言葉を紡ぐ姉の姿を、彼女の腕の中から改めて見る。
わたしとだいぶ歳の離れた姉は、わたしが物心ついた時から、変わらず品があり、美しい。
母から受け継いだというドレスや装飾品も、彼女によく似合っている。
きょうだいらしく、わたしたちの顔はよく似ている。
しかしそれぞれの服装と歳で、同じ家族といえど、就く役割が違うのだ。
星を集め、作る「王女」の役目は、姉のベガ。
その星を管理し、流す「神官」の役目が、わたし・アルタイル――。
わたしたちは、星を司る者。
遠く離れた青い星・地球まで、幸せを届ける、密やかな使者――。
「・・・アルタイル?どうしました?」
姉の顔を見たまま物思いにふけっていたわたしを、彼女の不思議そうな声が現実へ引き戻した。
「い、いえ・・・姉上は、いつ見てもお美しいなぁと」
はにかみながら言った私の言葉に、姉はくすりと、少々恥じらいの色を乗せて笑った。
「・・・まあ、今日はどうしたのです?ずいぶん変わったことを言ったりなんかして。お母様のことでも、思い出してしまいましたか?」
そういうわけではなかった。
しかしわたしは照れ隠しに、姉の腕の中で、さらにぎゅうっと顔を埋めた。
「あらあら。本当に、幼子の時に戻ったようですよ」
くすくすと笑う姉の声を腕の中で聞きながら、わたしは思った。
この、お互い孤独な神殿の中・・・
せめてあともうひと時だけ、直に優しさと、あたたかさを感じていたい。
(どうか、わたしと姉に、今以上の幸せを増やしておくれ・・・)
そう心の中で呟き、そっと目を閉じた。
するとそこには、その役目をつい先ほど託したばかりの・・・夜の丘に立つ、あの少女の姿が見えた。
【終】