Nicotto Town



年末年始に腐ってみました 4

長かったり短かったりしつつ、全部で11話です^^ゞ


遠矢2

「改めてよろしく。オレは、たかむらとおや。あんたは?」
目の前の彼はそう言った。
へー、不思議な偶然だな。
「俺は高槻遠矢って言うんだよ」
奇遇だねえ…と続けようとしたら、彼は眉をひそめ「はあ?」と言い放った。
「ふざけてんのか?」
「いや、えーと、本名なんだけど…」
それに彼は怪訝そうな顔で「ふーん」と言った。
えーとえーとえーと…。

「まあいいや。とにかくいつまでもここに突っ立っててもしょうがないし、出発しようぜ」
その言葉に、地面に落ちたままだった地図を手に取ろうとして、大事なことに気がついた。
「あ、明日バイトあるのにどうしよう」
思わずそうつぶやくと、さっきの声がまたどこからともなく聞こえてきた。
「こちらの世界で過ごした時間は、向こうではなかったこととなります。
つまり、こちらの世界へ落ちてきた直後の時間へ戻ることとなりますので、どうぞご安心ください」
へー。よく分らないけどそんなことができるんだ。それならと安心して地図を手に取った…が、
自分達と和也さん達がいる場所は印がついててわかるんだけど、自分達がどっちを向いているのかがわからないので、どっち向きに歩いていったらいいのかがわからない。
「あの、高村くん…」
なのでちょっと情けないけど高村くんに相談しようと声をかけたら、
「オレの事はトーヤでいいよ。みんなそう呼んでるし」
と言われたので、
「あ、じゃあ俺の事は…」と言いかけたら
「いいよ。あんたの事はあんたって呼ぶから」と言われてしまった。
はあ…。なんか完全に主導権にぎられてるみたいだ。まだ中学生くらいなのに、俺よりよっぽどしっかりしてる。
「ところで何?」
ああ、そうだった。
「あの、この地図なんだけど、今俺達がどっち向いてるか分かる?」
地図を見せてそう言うと、彼…トーヤくんは地図と周りの景色とを見比べ、あそこに見える山が地図上のこの山だからこっちへ行けばいいんだと言った。

ここは見渡す限りだだっ広い野原のようなところで、丈の短い草が一面に生えている。
その視界を唯一遮るのが、今トーヤくんが言った山。
なるほど、地図はこう見ればよかったのか。

「おい、いつまでそこにいるつもりだよ。置いてくぞ」
地図と山とを見比べて感心していたら、いつの間にかトーヤくんはずいぶん先を歩いていた。
それを慌てて追いかける。
それにしても…普通の紙のようなのに、俺達のいる場所や和也さん達のいる方向を点滅して教えてくれるこの地図も不思議だけど、トーヤくんもぴったりした服に革の胸当てとか、腕にも革を巻いたりとかずいぶん不思議な格好をしてる…と思っていたら、オレ自身もなんだかゆったりと広い袖の、すその長い不思議な服を着ていた。
しかも見覚えのないバッグを肩から提げていたりする。
「おーい、行かないのか? 日が暮れちまうぞ!」
うっかり考え込んでしまった俺に、さっきよりも遠い位置からトーヤくんが呼びかける。
ああ、いけない。こんなところで考え込んでいる場合じゃなかった。
俺は急いでトーヤくんを追いかけた。




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