地図の片隅に①
- カテゴリ:自作小説
- 2016/10/13 01:18:59
会議室の換気扇が低い音を立てながら回っている。
今日で何日眠っていないだろう…。確か二日ほど前に二時間ほど寝た気がする。
もうろうとする意識の外で怒鳴り声が聞こえる。業者同士が施工を巡って大喧嘩しているのだ。
「お前らの足場の解体を待っていたらこっちの工程が遅れちまう!」
ひげ面の四十ほどの男が言った。
「しかたないだろ!しっかり養生しなきゃいけないんだよ!」
金髪で長髪の二十ほどの男が言い返す。
ここはJV中島建設のとある工事現場。線路の下を掘って道路を通す構造物を作っている。お金も足りなければ工程もギリギリ…。とにかくやばいのだ。今年で入社4年目、俺、福原秋人もまだまだ経験足らずの若造であるにも関わらず昼勤夜勤昼勤夜勤昼勤…の繰り返し。この現場に来てまだ4か月ほどであるが、体重は7キロほど落ち、鏡なぞもう見たくもない。
出席してるんだかしてないんだかよくわからないような会議もようやく終わり皆が散らばっていく。その中で妙に明るい三十くらいの男が話しかけてくる。
「福原!相変わらず暗いなぁ!そうだ、今日一緒に飲みにでもいかないか?」
「大島さんは相変わらず元気ですね。自分今日は無理っすよ…まだ書類作らなきゃだし」
このとにかく声がでかく明るい人は大島さん。会社の先輩でこの現場の工事管理者だ。これだけ現場がやばいのに全く気負いというものがなくとにかくあっけらかんとしている。
「そうかぁ。残念だな!でもまた誘うからな!」
正直この明るさには救われる。本当にすごいと思う。いまさらながら色々考え込んでしまう自分にはゼネコンは向いてなかったのではないかと思う。この現場が落ち着いたらそろそろ本気で転職を考えよう。
とにかく今は仕事に集中しよう。午後イチで発注者の鉄筋検査がある。準備しなきゃ!
自分の知らない世界(業種)の話はすごく興味がありますね。
ゆっくり更新待っていますね^^
おはよう。
とても丁寧できれいな文章を書かれるね。
ミステリィとか、推理ものは、丁度こんな雰囲気だね。
次が楽しみ……だけれど、
無理はしないでね。
ボクのために、ありがとう。