一流の流儀③(小説)
- カテゴリ:自作小説
- 2017/10/08 21:10:01
一つの技を極めし職人は、時として理論を超越する。
黄金比をご存知だろうか?
ユーグリットによって数学的に導かれた黄金比だが、それ以前の芸術品にもこの黄金比が用いられているという。
つまり太古の職人は、経験から黄金比を「識っていた」ということである…
それからと言うもの、私は時間を見つけてはバイトのシフトを入れるようにした。
一通りのことが出来るようになるころには、春になっていた。
心境の変化が伝わったのだろう。
就活でもやっと内定が出た。
小さな商社だったが、コンビニの商品も扱っているということだったので、ここで頑張ろうと決意した。
卒論を終わらせると、あとはもうバイトに打ち込むだけだった。
渡辺さんは相変わらずの仕事ぶりだった。私は必死にその背中を追いかけたが、まだまだ先は長かった。
「全てをこなそうとしてもだめだ。【選択と集中】。これが大事だ。要は得意技を身につけること。」
見かねた渡辺さんが言った。
「君は商社に行くんだったな。よし発注をやってみてくれ。卒業までにマーケティングのセンスを磨くんだ。」
それから私は発注を担当したが、最初はダメダメだった。廃棄を沢山出してしまったり、逆に店から商品が無くなる状況を作ってしまったり。ちょうどいい塩梅というのが難しかった。
「市場は、需要と供給のバランスで成り立っている。我々は需要を予測し、供給を行う。前にも言ったがなんとなくではだめだ。様々データから統計的アプローチを仕掛けるんだ。」
渡辺さんはそう言った。それは私の卒論よりはるかに高度なアドバイスだった。
夏がくる頃のはなしだった。
つづく
実は音楽の作品にも隠されています。
フレーズの山や曲のクライマックスの配分が、それにあたるそうです。
勉強も仕事も、分析や時間配分は、大切な要素ですね。
音楽やスポーツの修練も、実はなんとなくの無い世界。
意志や心があってこそ、目標に近づけると思います。
共通のものを感じました。