リンリーン、電話がなる。
「後輩のTです。たまには、孤独な先輩と信長の野望でも、付き合おうと訪ねましたが、留守でしたね。何処に出かけていたんですか。」
「伊豆大島だ。」

「ところで、先輩の日記は、さみしい青春時代の感傷からか、現実離れした初恋ものが多かったと思うのですが、今回は大人の話でしたね。心境の変化があたのですか。」
「どこに行ったか訪ねて、スルーか君も同じだな。思ったより読者層の年齢が高いのではないかと感じて、ニコタ事務局に怒られるかもしれないと、ドキドキしながら不適切な表現も入れて、書いてみたんだ。」

「先輩、ニコタ事務局には怒られないと思いますが、先ほどの発言は読者の反感をかい、叱られると思います。そっちにドキドキした方がいいですね。真司と京子のその後が気になっている方も多かったですね。どうなるんですか。」
「そんなものは、しらん。他人が幸せになるかどうかに興味はない。それに、橋本環奈ちゃんなら幸せになるに決まっている。」

「先輩、ご機嫌ななめですね。何かあったんですか。」
「大事なメールを送らないといけなかったのに、書きかけで寝落ちをしてしまったんだ。信用を失ったはずだ。」

「気にしなくて、いいですよ。先輩の信用なんて、もともとないですから。それだけですか、不機嫌な理由は。」
「ニコタで、これから、マラソン大会に出ると呟いたのに、誰も励ましてくれないんだ。今日は寒いですと日本全国同じ情報しかくれないんだ。」

「それは、先輩が以前日記にマラソンに出ると書いたので、皆さんフルマラソンに出ると思っていたのに、10kmかよ騙されたわという、お怒りの結果だと思います。それだけですか。」
「ゴール地点には、大島紬を着た可愛らしいお嬢さん達がテープを持って待っていて、お疲れさまですと声をかけてくれるんだ。それなのに、俺がゴールした時は、寒いから交代してあげるねと気を利かした婦人会のお嬢様だったんだ。」

「先輩、本音を語るのは大事ですが、今日は着々とマイナスポイントを積み上げてますね。それだけですか。」
「事前に参加賞として、ゴール地点から300mしか離れていない温泉の無料券が配布されていたんだ。そこは、誰がそんな温泉を作ったんだと疑ってしまう、水着着用が必須の混浴露天風呂しかないんだ。」

「混浴だけですか。このご時世、数年後には、廃止に追い込まれそうですね。よかったじゃないですか。」
「ところが、フルマラソンに参加したSが完走するのに、5時間45分もかかったんだ。人類が2時間の壁を破ろうとしているときに、何で6時間近くもかかっているんだ。みんな、随分前に出かけてしまったじゃないか。」

「どうなったんですか。」
「走り終えて、直ぐに移動したら可哀想だから、1時間くらい休憩してでかけたら、島のおばーちゃんが迎えてくれたよ。海に突き出た温泉で、正面180度にわたって太平洋が広がり、海の向こうには天城山の伊豆半島や雪を被ったこれぞ富士山という風景が広がる。露天風呂は一つだけだけど、大きくてゆったり入ることができる。太平洋に沈む夕日は、圧巻だったよ。」

「明日も行けばいいじゃないですか。今日入らなかった人達が行くかもしれませんよ。」
「SとKは、露天風呂に行くと行っているが、俺はTと島一周サイクリングの予定なんだ。」

「それが、機嫌が悪い理由ですね。徹夜明けでも、ウキウキして島に渡ったのは、混浴露天風呂に惹かれていたからですものね。」
「ひょっとして、君と電話して、また、印象をわるくしたんじゃないか。」

「すでに呆れられていますし、奇特な方たちなので、大丈夫じゃないですか。」
「それなら、いいのだが....」

ツーツー