Nicotto Town



スカートひらり

通勤のために駅に向かう途中、近くに高校があり自転車に乗った高校生とすれ違う。遅刻しそうなのか、女子高生がスカートが風に膨らむのも気にせず、ペダルをこいでいる。

スパッツを履いているんだろうなと思いながらも、スカートに目がいっていたら、電信柱に頭を思いっきりぶつけた。火花が散るとか星が飛んだという表現がぴったりで、目の前が真っ暗になり、そして真っ白になった。

しばらく、しゃがみ込み、電信柱にもたれかかっていたら、痛みも引いてきた。違和感があった。目覚めたときのように、頭が半分眠っているような感じだ。立ち上がって歩き始めたが、どこに向かって歩こうとしているのか分からなかった。そして、自分の名前も思い出せなかった。

足の向くまま歩き、駅近くの珈琲ショップに入った。カウンターに座り、落ち着こうと思った。頭をぶつけたのは覚えている。そのせいだろうから、時間が経てば治るかなと、珈琲を飲みながら窓の外を眺めていたけど、ちっとも治らない。

珈琲も買えたし、新高円寺の駅近くにいることも分かる。珈琲ショップのトイレで顔を見たら自分だと分かった。おかしくなっているのは、記憶と自分との関連づけだ。

ジャケットのポケットに名刺入れが入っていた。日の丸商事の三浦友和と書かれていた。通勤カバンの中のスマホを使って、会社に体調が悪いので休むと伝えた。誰に伝えのか分からないが、お大事にと言われたので通じたのだろう。

スマホアプリの地図を立ち上げたら、昨日歩いた距離や消費したカロリーが表示された。地図に自宅の設定がされていて、住所がわかった。地図の目的地に設定し、自宅と思われる場所に行くことにした。

スマホの画面を見なくても、なんとなく歩いていける。風景にも覚えがある。ハードディスクにデータは残っているが、上手くアクセスできなかったり、ホームページがグルグル考え中になって止まってしまうような感じだった。

自宅に着いた。鞄の中から鍵を取り出し、部屋に入ると一目で一人暮らしだと分かった。上着を脱ぎすてて、自分探しを始めることにした。書類のようなものは、カラーボックスの中にあった。

プラスチックの箱の中に、葉書がしまわれていた。几帳面な男なのだろう。インデックスに昭和〇年、平成〇年と書かれて、年ごとに届いた葉書が整理されていた。一番古い年には、3通の年賀状が届いていた。

小学一年生の時のものだ。浜岡君と平君と山口百恵さんからだった。山口さんの年賀状には、「あけましておめでとう。ことしもなかよくしようね。」と書かれていた。

山と海に囲まれた田舎で、小学校は一クラスしかない。ご近所で集まって集団登校をしていて、小学3年までは集団下校だったので、ご近所の百恵ちゃんとはいつも一緒だった。

小学二年生の年賀状は6通になり、交友関係の広がりが感じられるが、百恵ちゃんからの年賀状には、「あけましておめでとう。ことしもなかよくしようね。」と全くの進歩が見られなかった。

小学三年生になると8通になり、交友関係がさらに拡大した。百恵ちゃんの書く文字は、子供っぽく大きな字から、女の子らしい可愛い字に変わっていた。年賀状には、「あけましておめでとうございます。今年もよろしくね。」と書かれ、仲良くしたいという表現が消えていた。

頭の中のハードディスクがギュンと回転を始めた。百恵ちゃんのお母さんに、仲良くしてねと言われていたので、小学校に入った頃は、れんげ畑で首飾りを作ったり、絵本を一緒に読んだりしていた。

三年生くらいになると、男子同士で遊ぶようになり、学校から帰ると野球やサッカーばかりして、百恵ちゃんと話す機会は少なくなっていった。

年賀状を見ていると楽しかった。今のプリントアウトとは違って、猿や羊が手書きの絵だったり、消しゴムを削ったハンコだったり、版画など手作り感で溢れていた。

中学になると百恵ちゃんからの年賀状には、イラストが沢山描かれるようになったが、相変わらず文面は、「明けましておめでとうございます。今年もよろしくね。」だった。

年賀状を受け取った時には、気が付かなかったけど、ガラスの仮面の名場面だった。バラを持ったイケメンとともに、「なんてことだ、この俺が花束だと。いままで、どんな女性にも花など贈ったことのないこの俺が・・・」と書かれていた。

そういえば、女子は、『ガラスの仮面』派と『あさきゆめみし』派でどちらが面白いかよく論争をしていた。俺は、『ときめきトゥナイト』派だった。

イラストの中のデザインだと思っていた模様が少し変だ。とても小さくて、眼を凝らしてみても、字のように見えるけど読み取れない。スマホで写真を撮って拡大してみた。『ハナタバヲマツテイマス』と書かれていた。

全く、気付いていなかった。その翌年から、百恵ちゃんの年賀状は届かなくなった。

ハードディスクがギュンギュン回り始めた。百恵ちゃんは、ショートカットが似合う切れ長の涼しい目で、大人びた雰囲気。とても美人だけど、物静かで憂いを秘めたようで気軽に声をかけることができない雰囲気だった。

しばらく年賀状を見ながら考えたが、こんなちっちゃな字で書いた百恵ちゃんが悪いし、あんな美人と付き合ったって、クラスで目立たない存在の自分と上手く行くわけがない。仕方ない、仕方ないと思った。

百恵ちゃんのおかげで、すっかり記憶が戻った。あの頃のセーラー服のスカートの丈は長かった。今のスカートがあれくらい長かったら、電信柱に頭をぶつけることもなかったのにと思った。

ハードディスクを超高速回転させ、今朝の女子高生がスパッツを履いていたかどうか思い出そうとしたが、記憶は蘇らなかった。電信柱に頭をぶつけるのが、少し早すぎた。

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2019/09/25 20:03
スズランさん
太陽が輝いている間は、星は見えません。漆黒の夜だからこそ、星が輝くのです。黒歴史は、黒魔術にはまっていた頃のことをおっしゃっているのだと思いますが、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーでは、攻撃魔法を操る黒魔術士はかかせません。ぜひ、ファイガやサンダラでモンスターをやっつけてください。
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2019/09/25 14:46
記憶を無くして、見直せる人生って羨ましいです。
私なんて黒歴史しかない(笑)
思い出したら赤面しそう( *´艸`)

ガラスの仮面とあさきゆめみしは母がはまっていたので読みました。
もう本はぼろぼろです(笑)
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2019/09/25 04:14
Cherryさん
部下の一人が、ラウンドマーク巡りをしています。各県で訪れるラウンドマークが決まっていて、沖縄は、首里城、美ら海水族館、平和記念大橋、伊良部大橋だと言っていました。ラウンドマーク巡りで検索しても全然ヒットしないので、部下は何をやっているのかと思ったら、「ドラクエウォーク」というゲームの中の話だったのかもしれません。
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2019/09/24 23:36
沖縄行きたいのはやまやまだけど、3日じゃぁちょっとむり。
空港が遠いのが痛い。

ガラスの仮面、まだ終わってなかったんですね。
ネットで調べてみます。
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2019/09/23 22:37
Cherryさん
50巻もあれば、しまう場所に困っちゃいますね。連載が中断しているみていですけど、まだまだ、続いているみたいですね。2年前くらいは40周年記念で、いろいろなイベントが開催されていたみたいです。来月の連休はどこかな。沖縄か北海道に上陸でしょうか。
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2019/09/23 21:06
ガラスの仮面、1巻から持ってます。
なかなか終わらなくてその後どうなっちゃんたんだろう・・・。

連休終わっちゃいました。
9月は連休2回、ニコタもだいぶさぼりました。
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2019/09/22 10:23
さなちゃん
ぶつけた頭は、大丈夫です。ぶつける前から、おかしくなってます。

ひろあきさん
仕方がありません。ヒラヒラするスカートに目が行くのは条件反射です。

輪謝さん
ガラスの仮面は連載中です。40年以上続いてますね。50巻まで出ているのかな。

リンゴさん
ときめきトゥナイトの最後を覚えていないですが、お母さんになっていたような記憶です。

ゆりかちゃん
ゆりかちゃんには、素敵な花束を贈ってくれる人が何人も現れて、かぐや姫状態になるでしょう。

たまちゃん
スピーチとスカートは短い方がいいという、沖人君の明言があります。明日はミニスカで。

みーびこさん
漫画は長く続きましたね。綾瀬はるかに噛み付いて、変身したいです。

オレンジ先生
真壁君は、背が高くて、超イケメンですね。オレンジ先生は、イケメン好きでしょうか。
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2019/09/20 23:12
ときめきトゥナイト
大好きでした^^
アニメは見ると
漫画と絵も声もイメージが
違ってガッカリしたのを覚えています。
真壁くんが好きでしたー^^
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2019/09/20 23:00
私も『ときめきトゥナイト』好きでしたぁ~ TVよりマンガ派でしたw


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2019/09/20 22:11
『ときめきトゥナイト』好きでした~!
でもアニメをたまに見ていただけで、漫画は読んでいないので、
実際のところ、ストーリーをすべて知ってるわけじゃないんですけど。
『あさきゆめみし』は、大学受験前に通っていた塾で、古文の先生が勧めていたので読みました。
一番好きなのは夕顔ですが、末摘花が意外と泣ける。
源氏物語に出てくる女性はみんな好きだな。漫画はわかりやすくていいですよね。
今、長いスカートが流行ですが、制服のスカートは短めのままですね。
短いままの方が、うれしいでしょ?w
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2019/09/20 18:01
こんにちは、沖人さん。

結構前に、日記のコメントで年賀状の話をしましたね^^
物をほとんど持たない沖人が、唯一取っておく物が年賀状と知った時は、思い出を大事して素敵だなぁと思いました。
さすが俗世の欲とはかけ離れた仙人です。

と、思ってたら…そんな甘酸っぱい思い出だったのですねv
これはどこまで実話で、どこから小説なのでしょう?
百恵ちゃんのモデルは実在するのかな。

「あさきゆめみし」と「ときめきトゥナイト」は読んだことがないので、
その中では断トツ「ガラスの仮面」派!
紫の薔薇をプレゼントされたらイチコロです♪

百恵ちゃん、すごく斬新な告白法ですね。
それは確かに気付かないかも~^^;
記憶喪失になったのに、冷静沈着すぎる主人公も面白かったです。
楽しい時間をありがとうございました(*^^*)
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2019/09/20 13:54
年賀状にもこんな楽しみ方が♪
ハガキは思い出の一コマですよね(*^-^*)やっぱり手紙っていいです。
名前だけ見ると、二人は結婚する予定なんですけどね( *´艸`)

ときめきトゥナイトは読みましたよ
はいからさんが通るが大好きでした^^
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2019/09/20 11:45
沖人さんの実話だったんデスネ…( ̄◇ ̄;)
女子高生のスカートの中を覗いたバチが当たったんですねΣ( ̄。 ̄ノ)ノ……お大事になさって下さいませ!
ガラスの仮面、まだ連載してるんでしょうか?
単行本しか読んでないけど、ブックオフだからか、置いてある最新の巻を見てみましたが、まだ完結してないですねぇ
ちなみに私は、王家の紋章派です♪
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2019/09/20 08:40
おはようございます。
歩いている時でまだ良かったですね。
車を運転中だったら事故を起こしかねませんものね。
大概、片手でスカートを押さえていないときは
体育用の短パンを履いてることが多いです。
・・・って、いつも見てるのかよって事ですね。
少女マンガは高橋亮子さんの「つらいぜボクちゃん」が好きでした。
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2019/09/20 07:47
ぶつけた頭は大丈夫ですか?www

ときめきトゥナイトならチラッと読んだことありますが

私が初めてハマった漫画は海の闇月の影でしたw




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