Nicotto Town



場となる奥

がりゆく。白昼夢を見たような、気が遠くなるような――。

(なんだ、これ)

 唇を噛んで目を閉じると、胸にいい聞かせた。いまそこに湧いた迷いは、不要なものだ。不要なものなら捨てるべきだ。要らないものに時間を割くほど、おれは暇じゃない――。

「安曇、おれの用は済んだな? なら、おれは寝所にいく。疲れたから、寝るよ」

「わかったよ。ゆっくり休め」

 いうが早いかさっさと踵を返した高比古を、安曇は苦笑して見送った。

 しかし、その言葉を聞くなりかっとなって、高比古は足を止めて振り向いた。

「休め? 寝るのが、休むってことか?」
<a href="http://www.bet36550.com" title="http://www.bet36550.com">http://www.bet36550.com</a>

 安曇は胸の前で腕を組んで、やれやれといったふうに笑った。

「どうした。なにが気に食わない? なら、おやすみといおうか?」

「――悪い。なんでもない」

 一蹴されると、高比古はぼんやりとして再び安曇へ背を向けた。

(おれ、どうした。苛々してる)
<a href="http://www.bet36550.com/レディースバッグ-ur55-2.html" title="ミュウミュウ">ミュウミュウ 新作</a>

 自分でもわからないうちに、高比古は怒りっぽくなっていた。

 なぜこんなに苛立っているのか。なぜ、いまなのか。

 死者を目の前にして、心のどこかが脅えたせいか。それとも――。

 理由を考えてみるが、それもいまはうまく解けない。

(なんだか、おかしい)

 頭には分厚い雲のような霞がかかって、これまでくっきりと見えていたはずのものまでがぼやけ始めて、見えにくくなっていた。

 そう思うと、高比古は一刻も早く安曇のそばを離れたくなった。
<a href="http://www.bet36550.com/miu-miuミュウミュウ-ur55-1.html" title="ミュウミュウ バック">財布 ミュウミュウ</a>
(早く、去ろう。気づかれないうちに――)

 腕組みをして木陰から自分を見送っているのは、杵築一聡明な男だ。

 彼のそばで悩んで、弱っているのに気づかれるのも、いらない心配をされるのも、弱みを握られるのも、どれもいやだった。





 兵舎の井戸は、門から続く広い庭の端にある。庭は大きく、簡単な陣形の稽古ができるようにつくられていて、武器庫や軍議用の館や、兵の集い場となる奥の庭など、区分けされたいくつもの場所へ行き来できる辻の役目も果たしていた。

 その庭を一望できる井戸のそばから、安曇は、遠ざかっていく高比古の背中を眺めていた。

「なぜ私は戦に関わる、か――」

 陽が傾きはじめたばかりで、兵舎に務めている兵は、それぞれの持ち場についている頃合いだ。

 兵舎の庭にある人影はまばらで、そこを横切る高比古の後姿は、誰かの影に隠れることなく最後まで見届けることができた。

 高比古が向かったのは、彼の寝床が用意された宿直兵のための棟だ。

 小屋の入り口を目指して角を曲がると、高比古の背中はようやく見えなくなる。

 庭から高比古の姿が消えると、安曇は井戸を囲う石組みに腰掛けて、ふうと息を吐いた。

(須佐乃男様の見立てのとおりなのかもしれない。あいつはまだ揺れているが、揺れは、前と同じものに感じる。これが思考錯誤の途中ということか。――後継者の育て方、か)

 高比古の様子がおかしい。それは安曇も、大国主も彦名も、去年から気づいていた。

 はじめにそのやり取りがされたのは、彼の宗像(むなかた)行きが決まる前。かねてから、御使の八雲(やくも)を通して妻問いをしていた筒乃雄(つつのお)の孫娘の婿に、彼を選ぶかどうかの話がされた場だった。

 はたして、高比古は本当に出雲を背負って立つ若者なのか。

 宗像の姫の婿になるとあれば、今後長年にわたって、出雲での地位を約束するようなものだ。その男を彼に決めてよいのか、と。

 上座であぐらをかいた彦名は、やれやれとため息をついた。

「半年前なら、こんな場を設けずにあやつを推したろうが……。まあ、いずれあらわれる徴(しるし)なら、早めに出てよかっ




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.