Nicotto Town



一度夜空を

の対象ではないにしろ、鹿夜は彼にとって、ほかの友人や侍女たちよりも一歩近い親密な場所にいるはずだ。彼の目はいま、鹿夜に心を許していた。

 だから、鹿夜は無理やり心を決めた。

(恋人でなくても、彼の一番なら、それでいいじゃない――)

 振り絞るような苦しい吐息をこぼした鹿夜に、火悉海は気づかなかった。
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 いまのような微笑を浮かべられるほど、彼は、いくらか楽になったのか。

 鹿夜をさしおいて癒されてしまったらしい彼は、さっきの恋の話にはひとまず区切りがついたとばかりに話をかえた。

「それにしてもさ、鹿夜こそ、いったいいつになったら嫁ぎにいくんだよ。いいかげん相手を決めないと、もらい手がなくなるぞ?」

「放っといて。あたし、もてるから」

 それは事実だ。鹿夜は火悉海の……次期王の従妹で、そのうえ彼と仲が良いことは周知のことだ。妻にしたいと熱心に求婚している男は何人もいた。

 そのことは火悉海も知っているくせに、彼はわざとからかった。

「ふうん? 妬けるな。もらい手がないなら、俺がもらってやってもいいのに?」

 また、適当なことを――。
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 むっとして、頬をぴくりとさせた。

 でも、一瞬たりとも「本当に?」などと聞き返そうと思わなかった自分に安堵した。

 火悉海のいう冗談を真に受けていないことにも、自信をもった。

「あいにくね。いま、あたしをめぐって男たちが争っているところだから、割って入るような真似なんかしないでよ? そのまま妬いていなさい」

 異国の姫を妻に娶ると決まっていた火悉海と同じように、鹿夜の嫁ぐ相手が、同族の有力者になるということは、幼い頃からわかっていた。

(そうよ。あたしのこの先は決まっている。あたしの嫁ぎ先をめぐっての小競り合いも、もうじき落ちつくでしょう。そうしたら、あたしは――)

 ため息をつく代わりに、鹿夜は、胸の中で愚痴をいった。


 さっきあんたがいったのとそっくり同じ文句を、あたしもいいたいわ。

 あんたを恋しいと思った瞬間より昔に気持ちを戻すには、いったいどうすればいいんでしょうね?

 次の好きな人ができれば、この苦しみは終わるのかしらね。

 そうだといいね――。お互いに。


 東の野からあがったばかりの今夜の月は赤みを帯びていて、心なしか、光はすこし温かく感じた。

 柔らかな光をわけ隔てなく注ぎ与える天上の星や、すべてをもろ手に抱いて包む夜天を見上げて、鹿夜はきゅっと唇を結んだ。


 月の神様、闇の女神様。

 どうか、あたしを癒してください。

 誰にも告げることができないあたしの苦しみを、どうか、誰にも気づかれないうちに――。

 そして、彼の苦しみも、どうか――。


 やがて、火悉海は鹿夜の背中に手を回したまま、ごろりと階段の上に寝そべった。それから、寂しそうにいった。

「なあ、本当に寝所に来ないか? なんかいま、ものすごく鹿夜と話したい気分なんだが。夜が更けるのを気にしないで、子供の頃の思い出話をさ……。狭霧と会う前のことをゆっくり思い出したらさ、すこしくらい気が晴れるような気がするんだ。なあ――」

 鹿夜は、即答した。

「だから、絶対に嫌だっていったでしょう? 嫁入り前の娘に、へんな噂を立てさせないで欲しいわよ」

「なんだよ、けち」

 火悉海は冗談をいうように軽く笑った。彼の少年のような笑顔を見下ろして、鹿夜は苦笑した。

(なによ。自分だけ、さっさと元気になる方法を見つけちゃってさ)

 でも、胸はほっとした。

 唇を噛みながら苦笑を浮かべて、もう一度夜空を見上げた。

(あんたが元気でいてくれるなら、あたしはそれで




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