Nicotto Town



すぐさま高比

た。

「少し考えたんだが――大国主の軍が発つのに合わせて、雲宮を出ようと思うんだ」

「え、雲宮を出る? どこへ――?」

「阿伊(あい)」<a href="http://www.watchsinevible.com" title="http://www.watchsinevible.com">http://www.watchsinevible.com</a>

「阿伊?」

 聞いたことのない地名だった。狭霧が反芻すると、高比古がそれに答える。

「出雲の奥地だよ。いってみたい場所があるんだ。そうしたいと安曇に話したら、そこに離宮があるから、しばらく泊っていいといわれた。それで――あんたも、おれと一緒にいくか?」

 寝床に入る前に火皿の灯かりは吹き消されていたので、舘は闇に包まれていた。

 でも、狭霧には、自分をじっと見つめる高比古の顔がくっきりと見えていた。それは、目が闇に慣れたのと、きっと、互いの顔を覚えきるまで見慣れたせいだ。

 高比古の目は、狭霧を誘っていた。「一緒にいこう――な?」と、眼差しに抱きしめられたと感じるほど、真剣に――。

「もちろん、いくよ」<a href="http://www.watchsinevible.com/wiredされた-txqq9d-11.html" title="セイコー アルバ">セイコー アルバ</a>



 狭霧が答えると、高比古は小さくうなずく。

 それから、もう一度狭霧の頬を指でなぞって、掛け布にくるまりなおした。

「おやすみ」

「うん、おやすみ――」<a href="http://www.watchsinevible.com/seiko-5-txqq9d-10.html" title="seiko 修理">seiko 修理</a>

 挨拶を返すものの、狭霧は上の空だった。

 高比古からの誘い文句に応えたのは、誘われたのが嬉しかったからだ。でも、それ以上に、別の想いがあった。

 なんとなく、高比古を一人で遠くにいかせたくなかった。

 脳裏には、昼間に聞いた須佐乃男の言葉が、繰り返し蘇った。

『あいつは、武王になるには、まだ死の匂いが足りない。……まずはそれを覚えて、女神と向き合わねばならないというのに――』

 声を振り切るように、狭霧も掛け布を引き寄せた。

 それでも少し心もとなくて、隣で眠る高比古の腕に、そっと指を触れさせた。

(わたしも、一緒にいくからね?)

 心からそう伝えたくて、そうしていると、隣でまぶたを閉じる高比古が少し笑った。それから、腕に触れる狭霧の手を自分の手で包み込んで、温かな熱がこもった掛け布の下で手を繋いだ。

「おやすみ――」

 闇のしじまに柔らかく広がった、高比古の囁き声。それは、狭霧の胸の中を覆ったもやをすっと晴らしていく。すぐに、狭霧は何も考えられなくなった。――眠りに落ちたのだ。





2章、千古の誘い (1)




 雲宮を出ることになった狭霧と高比古が、別れの挨拶をしに真浪のもとを訪れると、真浪は、越の離宮という場所まで足をのばそうともちかけた。

「越の……り、きゅう――?」

 誘われるなり、高比古は腰が引けたようになる。

 真浪は、すぐさま高比古の心中を言い当てた。

「なんなの、その顔? あ、わかった――盛耶に会いたくないんだろ?」

「……なぜわかる?」

 盛耶は、高比古と次期武王の座を争っていた相手のうち一人で、会えばいつでも口論になる仲だ。それは、きっと二人の生い立ちが真逆だからだ。盛耶は、大国主と一の后の長子で、生まれながらの王子だ。対して、高比古は出雲の生まれではなく、力を示すことで成り上がり、今の位を得ている。

 高比古はしかめっ面をして、真浪の笑顔を睨んだ。

「――おれ、おまえにそんな話をしたことがあったか?」

「いやぁ、ないよ。ただ、きみと彼って合わなそうだなあと思ってさ。あいつは、おれの従兄弟(いとこ)みたいなもんだから、よく知ってるしね」

「そうなのか?」

「そりゃそうだよ。あいつの母君が越の国の出で、童の頃から知ってる人だからね。盛耶の母君といえば、美人で有名で、おれたちにとっては、近くに住んでいる憧れの姉上だった。いやあ、懐かしい。憧れの姉上にかまってもらいたくて、幼い頃、よく王宮に忍び込んだっけなあ!」

「――はあ?」

「 




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