Nicotto Town



武人か豪族に娶られるだろうに

毪宋恢盲筏皮い郡韦恰⑤x矢に会いにいくためには雲宮を半分横切らなくてはならない。名折れの武人の住まいも兼ねている巨大な兵舎も、兵舎を囲む林も、馬屋も、侍女たちが住まう館も炊ぎ屋も……。王宮とはいえ、武人も侍女もが住まう雲宮は、塀と壕に囲まれた巨大な集落のようで、とにかく広いのだ。おかげでここにはふだんから人が大勢いたが、今日はとくにそうだった。

(もう! なんでこんなに人がいるのよ。今日にかぎって)

 兵舎は武人たちでやたらとにぎわっているし、炊ぎ屋から立ちのぼる湯気も、今日に限ってはいつもより多い気がする。

 でも、いくら人出が多くて、いつもより多くの目がそこにあるとしても、狭霧は誰かに姿を見られるわけにいかなかった。少なくとも、輝矢のもとへたどりつくまでは。

 ゆく手に人影が見えるたびに、さっ、さっと木陰や建物の柱に身を潜めて、やり過ごす。

 すれちがった人の目が自分ではないべつの方角を向いているのをたしかめるやいなや、走りやすいように桜色の裳をつまんで物影を飛び出し、山吹色の帯を風にはためかせて……。

 狭霧は林の木立のすき間をぬって、通い慣れた館を目指した。

 


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「輝矢、わたしよ」

 輝矢の館を守る番兵がよそ見をした一瞬の隙に、狭霧はこっそりと戸口へ身を滑り込ませた。

 息を切らして忍び込んだ狭霧と目が合うと、そこにいた輝矢はぷっと吹き出した。

「まったく……きみは盗賊になれるよ」

 敵国の王子を閉じ込める牢屋じみた館とはいえ、ここが王子のための住まいであることには間違いなかった。造りはけっして悪くない。滑らかに磨き上げられた壁には華やかな飾り布がかけられていたし、調度類も豪奢で、狭霧が暮らす宮とくらべてもひけをとらなかった。

 ただし、少々狭かった。戸口からたった数歩飛ぶだけで、狭霧が輝矢に抱きつくことができるほどに。

「元気だった? 会いたかった、すごく」

「狭霧が会いにきてくれて嬉しいよ。七日ぶりかな」

 十五歳になっても、狭霧と輝矢の関係は昔のままだ。誰より好きな幼馴染で、一緒にいて一番居心地の良い相手。無邪気に抱きつく狭霧は娘という年になり、抱き返す輝矢も童と呼べる身体ではなくなった。輝矢の背丈はいつのまにか狭霧を追い越して、顔立ちもずいぶん少年らしくなった。でも、もともと輝矢は大人びていたのだ。狭霧にとって輝矢は、幼い頃からまるで変わっていなかった。

 いや……。輝矢の背中を抱きしめる指先に力を込めると、狭霧はそっと目をつむる。顎を輝矢の肩に乗せると、ちょうど鼻先に輝矢の髪飾りが触れた。後ろで一つにまとめた彼の髪には、染め紐を編み上げた髪飾りがついていた。

 童顔のわりに、抱きつくと肩は広い。それがなおさら狭霧には心地いい。

 抱きついたままぼんやりとしていると、狭霧を抱きしめる輝矢の腕にも力がこもった。

「狭霧に会いたかった」

 耳元に落ちてきた輝矢の柔らかい声は、ますます狭霧をうっとりとさせる。

 でも、輝矢の腕からは少しずつ力が抜けていく。

 お互いの顔が見えるほど身体が離れてしまうと、輝矢は寂しそうに笑った。

「いつまでこんなふうに狭霧に会えるんだろう。……きみは大国主の娘だよ。いまに名のある武人か豪族に娶られるだろうに」

「しないわ、結婚なんか」

 狭霧はぶうっと頬を膨らませた。

「ううん、嫁ぐなら絶対に輝矢よ。……そうよ、そうすればいいのよ」

 そこまでいうと、狭霧はぱっと顔を輝かせた。

「ねえ、わたしを輝矢の嫡姫(むかひめ)にしてよ。輝矢もわたしのことを好きでしょう? わたしを妻にしてしまえば、輝矢は正真正銘の出雲の男にな 




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