Nicotto Town



こなしていた

wだよ。後でね』

 そういって、背後で彼がこぼした輝かしい笑い声――。

 気が遠くなるのが一瞬なら、戻るのも一瞬だ。

 はっと我に返った時、狭霧は盛耶から乱暴に手を引っ張られていた。

「おい、狭霧? いくぞ?」

「う、うん……」

 盛耶の提案を飲みこめたわけではなかったが、今の狭霧は断ることができなかった。

 目の裏には、まだ輝矢の笑顔がある。目を閉じれば……心も閉じてぼんやりとすれば……輝矢の笑顔に会える。

「狭霧?」
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 心配したふうに眉をひそめる高比古の姿が、視界の隅に見えた。でも、「あぁ高比古がそこにいる」と思った時、彼はすでに少し離れた場所に見えていた。

 盛耶に手を引かれた狭霧は一本道をいき、港の方角へ向かっていた。

「見よう見まねでいいから。遠賀の女に頼みたくないんだよ。男にはなおさらだ。櫛はどこだ? おまえの宿にあるのか?」

「うん……」<a href="http://www.2509g5.com/レディースバッグ-elupo5-2.html" title="ブランドバッグ 人気">バッグ メンズ</a>
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「こっちか? 港か?」

「うん……」

 夢見心地のおぼつかない足取りで、狭霧の足は盛耶に引きずられるようにして野道を進んだ。

 何度か、盛耶は背後を振り返っていた。

 何度目かの後に、彼は高比古を探しているのだと狭霧は気付いた。離れいきながら、いい合いをした相手の様子を窺っているのだと。

(高比古は?)

 ぼんやりと思って狭霧が振り返った時、高比古も、狭霧たちに背を向けていた。出雲の兵で賑わう川べりの広場へ向かって――。

 きっと盛耶にいわれた通り、大国主のもとへ向かうのだ。


4章、暁の香り (1)



 太陽が西に沈みかけていたせいで、真横から射す光はすでに赤く色づいていた。

 高窓から滲む茜色の光に彩られた小屋の中で、狭霧はあぐらをかく盛耶(もれや)の後ろに膝をついていた。

 さらさら、さら……。盛耶の髪は意外にも素直で、木櫛で梳くと、ほとんど力を入れなくても従順にいうことをきいて、まっすぐに流れ落ちる。結い紐の端を唇で咥えながら黒髪を分け、見よう見まねで両耳のそばできつく結び、くるりと丸めて――。

 狭霧の手が止まると、盛耶はちらりと背後を気にした。

「どうだ?」

「……さっきのほうがいいと思う」

 もともと盛耶の髪は、首の後ろで一つにまとめられていた。盛耶のために、鎧に合わせてつくられた髪飾りには黒味を帯びた毛皮があしらわれていて、とても雄々しく、彼によく似合った。でも、生まれて初めて狭霧が結った、少々不格好な出雲風の角髪(みづら)は――。

 正面に回ってしげしげと出来をたしかめるものの、実のところ、それは盛耶の華のある顔立ちにうまく馴染まなかった。

「わたしじゃなくて、もっと器用な人にやってもらえば、もしかしたら似合うかも……」

「いいんだ、似合わないってことくらい、俺もわかってる」

「……前の結い方に戻そうか?」

「このままでいい」

 盛耶はあぐらをかいた膝に肘を置き、うつむいている。似合わない髪型に変えろと頼んだのは自分のくせに、仕草はぷいとすねているようだった。

「いいじゃない、無理しなくて。前のほうがかっこよかったよ?」

「いい。大国主の子のくせに出雲の正装が似合わないなんぞ、とんだ間抜けだ。目が慣れるのを待つ」

「大国主の子のくせに似合わないって……それですねていたの?」

 力ずくで狭霧の手を引いて、浜里にある狭霧の仮宿を目指したのは、さっき高比古に出会ってしまったからだ。

 高比古の身なりは、衣服から髪の結い方まで、すべて出雲風だった。出雲生まれではないせいで、高比古の顔立ちは生粋の出雲の民とは少し違うが、彼は出雲服を着こなしていた。盛耶は、高比古に嫉妬したのだ。

 狭




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