Nicotto Town



家まで戻ってきたのだが

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「なんで岐阜に?」
 市は黙ってしまった。
「姉上様は年賀の宴席の件に心を痛まれておられるのです」
 茶々と初を両手にして、牛太郎を見送りに門前にまでやって来た犬がそう言った。
「兄上様とはお顔を合わせておられません」
「そういうことスか」
 なんでも、賀宴の事件を知った直後はあの市も激怒しており、羽柴藤吉郎の仁は己の栄達のため、その義は上総介への機嫌取りに過ぎない、と、憤懣やるせなかったらしい。
「サルはぬつっとぢゃ」
 茶々まで感化されてしまっている。
 ここまで嫌われてしまって気の毒だなと牛太郎は思った。藤吉郎ではなく、女房の寧々が。
 牛太郎は一礼を残して門をくぐり出、屋敷をあとにする。
「左衛門尉殿!」
 犬の声に牛太郎は振り返った。
「こ、今度、来られるときは犬にも教えてください」
 茶々と初が小さな手を大きく振ってくる。牛太郎はもう一度頭を下げ、背中を向けると、ひっそりとにやけた。
 そんな気分のまま、城を下り、黙って脱け出して来たことも忘れて真っすぐに帰路を辿っていく。思うことは勿論武田のことではなく、犬のこと。犬が牛太郎に掛けてきた一言一言。やっぱり自分に気があるのだろうか、どこまで気があるのだろうか、どうして気があるのだろうか。
 春の甘い風を吸い込んで、すっかり舞い上がってしまっている。
「駄目だ駄目だ。やめろやめろ」
 と、自分の頭を自分でばかばかと殴る。
 織田の姫ともあろう人が、自分などに気を持っているはずがない。
「でも、おれって痩せたしな」
 そう言いながら、頬のあたりを撫でてみる。顎の辺りをさすってみる。梓に刑を処された直後はげっそりと痩せ細っていただけだが、あれから三カ月も経ち、食べる物は食べて、あくせくと動き回っている。
 そういえば、近頃は自分の姿を確かめていない。にやりと笑う。きっと、いい男になっているに違いない。
 牛太郎は足を速めた。梓かあいりに鏡を借りようと考え、あいりに詰め寄られたことはもう覚えていない。
 そうして、我が家まで戻ってきたのだが、玄関の敷居を跨ごうとしたところ、庭先から何やら声が聞こえてくる。
 どこか除け者にされた感覚で、そっと覗いてみる。庭先には家の人間たちが総出だった。縁側には女たちや太郎が立っていて、下では従者たちが一頭の馬を取り囲んでいる。
「あっ」
 と、声を上げた。
 そういえば、堺の馬喰に牝馬を注文したのだった。春になったら岐阜に連れてこいと申しつけていた。
 馬を購入したことを存じているのは牛太郎と四郎次郎だけである。なので、牝馬を連れてきたらしき馬喰と従者たち、とくに栗之介が揉めているようであった。
「おいおい」
 牛太郎は揉めごとに割って入っていくように、鷹揚な素振りで姿を出した。
「いいんだ、おれが堺で買い付けた馬だ」
「そんなの聞いてねえぞ」
 と、牛太郎に気付いた栗之介が詰め寄ってくる。
「なんでこんな馬を買ってんだ。なんのために買ったんだ。誰が乗んだ」
「なんだよ、お前。何をそんなに怒ってんだ」
「必要ねえだろ」
 栗之介は焼けた額に皺を集めてやたらと語気を荒げており、牛太郎はその理由がよくわからない。
「必要あるかないかはおれが決めることだ。お前が決めることじゃない」
「必要ねえだろうよ! 何のために必要なんだ、こんなおんなっ子!」
 栗之介はやって来た牝馬を指差して、相当な不満らしいが、牛太郎が見る限り綺麗な馬だった。栗毛でおとなしいし、しかも、たてがみや尻尾は銀色だった。栗綱よりも見映えがいいと、牛太郎は思った。
「おい、馬喰。いい馬じゃんか。よくやったぞ」
 そう言いながら牛太郎は牝馬 




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