Nicotto Town



一流の流儀①(小説)

どんな分野であっても、一流と呼ばれる人間は圧倒的な修練を積んでいる。

1日10時間以上ピアノに向き合うピアニスト。
厳しい食事制限の下に体を作るボクサー。
寝る間を惜しんで方程式と格闘する研究者。

人々は「天才」の一言で片付ける。
しかしながら、そこには血のにじむ努力があった…


私は平凡な大学生だった。
今日も就職面接だったが、大した手応えもなく、こうして家路についている。

コンビニで夕食でも買って帰るか。

ふと立ち寄ったコンビニで、私は信じられないものを目撃した。

その男は完璧だった。コンビニの店員としてだ。

レジに並ぶ長蛇の列をあっという間に消化すると、運ばれてきた商品を正確無比に陳列していく。

「いらっしゃいませ。」

もちろん私に対する挨拶も忘れない。

立読みするふりでしばらく観察した。
高速で床掃除を終えると、外のゴミ箱を片付け、陳列棚の奥のホコリを払っていく。もちろんその間の接客も忘れない。そして店内はピカピカになる。

アレルギーのあるお客さんに原料の解説をし、外国人には流暢な英語で接客、目の不自由なおばあちゃんの手を引いて案内…不測の事態にも臨機応変に対応していく。


誰も気付いてない。だが私はその異様さに気付いてしまった。

私は適当にスイーツを選ぶとレジへ向かった。
「包みましょうか?」
「えっ、あ、はい。」
小さなケーキだったがまるで高級スイーツのように包んでくれた。

そういえば今日はクリスマスだった…

外は雪が降り始めていたが、その心遣いに胸が暖かくなるのを感じた。

つづく

アバター
2017/10/08 21:53
正確無比という表現とは裏腹に、一つ一つの所作に、
心が感じられる店員さんだな~と思いました。
アバター
2017/10/08 09:46
今回は「コンビニ店員」なんですね
クリスマスはこれからの季節ですから、長編になるのでしょうか?
楽しみです^^



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.