一流の流儀②(小説)
- カテゴリ:自作小説
- 2017/10/08 13:09:28
サーカスのピエロにどんなイメージをお持ちだろうか?
ほとんどの人は、おどけて観客の笑いを誘うその姿にドジな印象を持っているだろう。
しかし、ピエロは最強の称号であった。
サーカス団の中でも、すべての技を極めし者に与えられる称号こそが「ピエロ」だった…
コンビニは扱う商品が多岐に渡る。
また、時代に敏感であり、常に最新のトレンドを取り入れている。
そのため、その全てを把握するのは至難の技だ。
しかし、渡辺さんはそのほぼ全てを網羅していた。
バイトとして例のコンビニで働きだした私だったが、知れば知るほど渡辺さんは恐ろしい存在だった。
発注などはその最たる例だった。
彼は言った。
「天気、気温、湿度、過去の売上データを統計分析しているんだ。なんとなくではだめなんだ。おにぎり1個にも徹底した数学的裏付けが必要になる。」
また、研修中の私にはこうアドバイスした。
「まずは、マニュアルを頭に叩き込むこと。そして、実践する。しかし、そこで満足してはいけない。マニュアルは標準的な処置方を示しただけにすぎない。」
また、並外れた体力の持ち主だった。夕勤から夜勤の通し勤務を行い、それが連日続いても、全く業務に影響は無かった。
「どうしてコンビニで働いてるんですか?」
私は失礼を承知で聞いてみた。
「僕が欲張りだからさ。」
「欲張り?」
「僕はいろんな経験を積みたかった。なんでもできなきゃいけないコンビニ店員はおあつらえ向きだったというわけさ」
就職に当たって、適当に楽したいな〜とか考えていた私は自分が恥ずかしくなった。
きっと面接官はそんな私を見抜いていたのだろう。
その日から私も死ぬ気で業務に取り組んだ。
つづく
お客様を喜ばせる余裕と心が必要な、最高の称号ですね。
すべての知識、経験が未来につながっていくという
予感のする場面だと思いました。