最後の言葉 ~男~
- カテゴリ:自作小説
- 2017/05/17 21:25:00
君が最後に残した言葉。
それを思い出すと、君との時間を思い出すと、あの日から10年たった今でも涙する。
毎年、この日は、君はそばにはいないのに、ケーキにろうそくをたてて、友達と集まる。
友達には、「さすがにもうやめろよ。」なんて言われるけど、誰がなんと言おうと、今日は特別な日。
君が生まれた日。
そう、誕生日。
そして、君と僕が付き合った日。
君はろうそくの火を消せないから、僕が毎年消している。
フーッ
「おめでと~!」
すぐに電気がついて、明るく振舞ってても、僕にとっても、友達にとっても、悲しい日だ。
「あれ?1本、消えてねぇじゃん。」
友達がそう言って、消えてないのに気づいた。
「ほんとだ…もっかいふけよ。」
消そう。
そう思った瞬間、隙間風がふいた。
その隙間風で、ろうそくの火が消えた。
僕は思った。
あぁ、君が消したんだ。
「そばにいるなら、姿見せてよ…」
弱弱しい僕の声が、静かな部屋に響いた。
「ねぇ、聞いて?好きだよ。大好きだよ。」
病室に響いた僕の声に、君はこう微笑んだ。
“私も。もっと早く知ってればよかった。”
目の前で息を引き取った君に、涙が止まらなかった。