Nicotto Town



Ke53@

「綺麗だね。」

「おん。」

「また見れるかな?」

「わからん。」

キミは冷たかった。

Ke53@を見ているときも。

七色に輝くKe53@を見ているときも。

もうすぐ、私、死ぬんだよ?

余命1ヵ月。

そう宣告されてから、数週間がたった。

病室から見えるKe53@。

「ねぇ、健人は私がいなくなったほうが、嬉し?」

「え、な、なわけないやろ!」

「そっか…ならよかった。」

そんな会話は、数週間前のこと。

もう、私、死んじゃったんだ。

キミはKe53@を違う女性と嬉しそうに眺めていた。

「綺麗やね。」

「おん。まぁ、俺、この虹より、綺麗なん知ってるけどな?」

そう、Ke53@とは、虹のこと。

「え〜、なぁに?」

「そんなん、隣におるやつにきまってんやん。なぁ、結婚してくれへん?」

私も隣にいるよ?

ずっと、ずっと前から、私は、私は、邪魔だったんだね。

気持ちは、一方通行だったんだね。

「もちろん。健人っ…覚えてくれとってんね。虹見える公園でプロポーズされたいって私が言うてたの…」

「当たり前やん。」

「ふふっ、嬉しい。」

幸せそうでよかった。

キミが家に帰ってきたんは、夜遅かった。

0時まわってた。

なにしてたんかな?

「なぁ、おるん…?なぁ、まだ、見守ってくれとるん…?虹、好きやったやろ?虹みながら、プロポーズされたい言うてたやろ?病室で見た虹、綺麗やったな。当たり前のようにおったから、冷たくしてもうたし、大切に出来んくてごめんな?こんな俺のこと、許してくれや…」

虹が好きなこと。

プロポーズするときの理想のこと。

病室で見た虹のこと。

全部、覚えてくれてたんやね。

知ってから、私は手紙を書いて、キミの家の机に置いといたよ。


“虹をまた見れたね。虹が見えるところでプロポーズしてくれたね。あの時、私も隣にいたんだよ?なんだか、嬉しかった。相手の女性に向けられているのはわかっていたけど。覚えててくれたこと、嬉しかった。今日、結婚式だよね?おめでとう。奥さんのこと、幸せにしてあげてね。不器用な健人だから、つい、傷つけてしまいそうだけど。そんなところも、大好きだったよ。私、生まれ変わって健人の子供になろうかな?もう、後悔ないから…ばいばい、ありがとう。”


「健人〜?これ、なぁに?」

「んー?なんやこれ…っ…友達からのお祝いメッセージ。」

「そっか。」

「ありがと…」

小さくつぶやくように伝えたキミの感謝の言葉。

届いてきたよ。

「幸せにしたるからな〜!!」

幸せになってね。




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