Ke53@
- カテゴリ:自作小説
- 2017/07/11 19:14:08
「綺麗だね。」
「おん。」
「また見れるかな?」
「わからん。」
キミは冷たかった。
Ke53@を見ているときも。
七色に輝くKe53@を見ているときも。
もうすぐ、私、死ぬんだよ?
余命1ヵ月。
そう宣告されてから、数週間がたった。
病室から見えるKe53@。
「ねぇ、健人は私がいなくなったほうが、嬉し?」
「え、な、なわけないやろ!」
「そっか…ならよかった。」
そんな会話は、数週間前のこと。
もう、私、死んじゃったんだ。
キミはKe53@を違う女性と嬉しそうに眺めていた。
「綺麗やね。」
「おん。まぁ、俺、この虹より、綺麗なん知ってるけどな?」
そう、Ke53@とは、虹のこと。
「え〜、なぁに?」
「そんなん、隣におるやつにきまってんやん。なぁ、結婚してくれへん?」
私も隣にいるよ?
ずっと、ずっと前から、私は、私は、邪魔だったんだね。
気持ちは、一方通行だったんだね。
「もちろん。健人っ…覚えてくれとってんね。虹見える公園でプロポーズされたいって私が言うてたの…」
「当たり前やん。」
「ふふっ、嬉しい。」
幸せそうでよかった。
キミが家に帰ってきたんは、夜遅かった。
0時まわってた。
なにしてたんかな?
「なぁ、おるん…?なぁ、まだ、見守ってくれとるん…?虹、好きやったやろ?虹みながら、プロポーズされたい言うてたやろ?病室で見た虹、綺麗やったな。当たり前のようにおったから、冷たくしてもうたし、大切に出来んくてごめんな?こんな俺のこと、許してくれや…」
虹が好きなこと。
プロポーズするときの理想のこと。
病室で見た虹のこと。
全部、覚えてくれてたんやね。
知ってから、私は手紙を書いて、キミの家の机に置いといたよ。
“虹をまた見れたね。虹が見えるところでプロポーズしてくれたね。あの時、私も隣にいたんだよ?なんだか、嬉しかった。相手の女性に向けられているのはわかっていたけど。覚えててくれたこと、嬉しかった。今日、結婚式だよね?おめでとう。奥さんのこと、幸せにしてあげてね。不器用な健人だから、つい、傷つけてしまいそうだけど。そんなところも、大好きだったよ。私、生まれ変わって健人の子供になろうかな?もう、後悔ないから…ばいばい、ありがとう。”
「健人〜?これ、なぁに?」
「んー?なんやこれ…っ…友達からのお祝いメッセージ。」
「そっか。」
「ありがと…」
小さくつぶやくように伝えたキミの感謝の言葉。
届いてきたよ。
「幸せにしたるからな〜!!」
幸せになってね。