Nicotto Town


ころんころん日記


ルームメイト


この時期になると映画界が騒がしくなる。
いろいろな賞の発表があったり、アカデミー賞の放送があったり。

そういう番組を見るのが好きだ。
映画の世界に身を置いている人達のキラキラした姿を見ながら
いいなぁ~~なんて思っている。

そしてある友人のことを思い出す。

学生時代、私は学生寮に住んでいて、そこは二人部屋だった。
同室の子は同学年だったが、浪人して入って来ていたので1歳上。
エミちゃん、と呼んでいた。(仮です)

エミちゃんは元々はその大学志望ではなかったようで、
「とりあえず」大学に入って、1年後にアメリカに留学するのが夢だった。
だからエミちゃんとの生活は1年限定っていうのは
最初から(っていうか途中から)既定路線だった。

エミちゃんはアメリカが大好きだった。
そして英語が大好きだった。
でも私達の学科は英語学科じゃなかった。
エミちゃんはそれも辛かったようだ。
早く1年を終え、早くアメリカに行き、早く英語の世界に入りたいようだった。

1度、エミちゃんの英語好きに驚いたことがある。

英語には関係ない学科だったけど、授業では英語があった。
とある英語の試験があり、
彼女は自信満々でそれに臨んだが、返ってきた結果は「優」。
成績って当時、三段階で1番上が「優」。
でも特にいい数名だけ「秀」っていうのがもらえてて、
彼女は自分がそれじゃないのに納得いかなかったようだ (^-^;

彼女は友人数名を引き連れて教授室へと向かった。
そこでもう1度採点のやり直しを求めたようだ。

そして先生がテストを見直してみると、なんと先生の間違い。

エミちゃんは無事「秀」に格上げになった。

言わなかったらそのままだったんだけど、
そこまで自分に自信を持って教授室に乗り込んでいけるエミちゃんに
心底驚いた。

もう1つエミちゃんで思い出すのは、ある曲の話。

私達の寮の部屋には途中までTVがなかったんだけど、
あれなんでだったんだろうなぁ~~。途中からTVが部屋にやってきた。
多分、先輩のお古とかをもらったんだと思う。

白黒で、アンテナ線も部屋にはないから、
小さな携帯用のアンテナを取り付けて、それをいい方向に動かしながら
時々TVを見ていた。

その時、多分、煙草のパーラメントのCMに流れている曲で
とっても素敵な曲があって、
私もエミちゃんもその曲が知りたくなった。 それは洋楽だった。

今ではCMの曲名検索なんて、スマホをピピっていじればすぐ!
なんだろうけど、当時はCMの曲名を探すだけでも結構至難の業だったのだ。

で、二人で市内中心部へ出て、あるCDレンタル屋さんで探そうと。
でもむやみに探したところで、見つかるわけもなく、
店員さんに聞くことにした。

二人「あの~パーラメントのCMの曲を探してるんですが~」
店員「どんな曲です?」
二人「どんな曲って…(;´・ω・) 」

そして二人で歌ったのだww

たんたらら~ん、たんたん~、たた~ら~♪ ♬

た~た~、た~ら~らら~~~♬


散々歌わせたあと、その店員は一言こう言った。



店員「さぁ… (-。-)y-゜゜゜」




はぁ?!!! ここまで聴いといて何???!!! 
とんだ赤っ恥だわ。

っていうか、そんなに洋楽に詳しくないだろー!!あんた。
ただのバイトだろー。
どうせ何歌ったって分からなかっただろ。
なら最初から歌わせるんじゃないよ!

(と、帰りのバスで二人でブーたれた)


ま、それも今となっては面白おかしい二人の思い出なんだけどww

その曲はそのまま正体不明で、
パーラメントのCMはしばらくして終わった。



結局、エミちゃんは有言実行で、その大学には1年間しか在籍せず、
4月からはアメリカの大学に行くことになった。

その別れを控えた2月末だったか、3月の頭だったか…
私達と、仲良かった数名も加えて、
私達の部屋のおんぼろTVで、アメリカのアカデミー賞を見た。

私は当時から映画好きで、エミちゃんなんかをよく映画に連れ出していたし、
みんなでそのアカデミー賞は楽しみにしていた。

女優のドレスの華やかさとか、美しさとか
白黒TVでは全く伝わらなかったがーー

でも、なんだろう… そのセレモニーはやっぱりとても感動的で、
出ている人達の映画への愛が詰まっていて、
やっぱりその時も私は羨ましさで胸がいっぱいになっていた。
映画っていいなぁ~~


そして、エミちゃんを見た。


エミちゃんは涙を流しながら、画面を見ていた。


エミちゃんの涙はただただ「アメリカへの憧れ」の涙だった。


もう少しでエミちゃんとはお別れだったけど、
そしてエミちゃんは私達との別れの寂しさなどより、
今自分がアメリカにいない事の方が寂しくて仕方ないようだったけど、

でもでも、良かったね、エミちゃん。やっと行けるね。

そこにいた友人数名は、エミちゃんの涙に言葉がなくなっていた。




それから1年ーーーーー。

私は新しい部屋に移り、新しい同居人を得て、エミちゃんのいない
日常にも慣れていた。

そこにエミちゃんから初めての手紙が届いた。

封を開くと、近況などが日本語で書かれた後に、
1枚全て英語で書かれた便箋が最後に出てきた。

そこにはあの日、二人で探したパーラメントのCMの曲の歌詞が書かれていた。

エミちゃんはアメリカに行き、向こうで現地の彼氏を見つけ、
その彼に、あの時の曲を聞いたそうだ。

あの曲はアメリカでは有名な曲だったらしい。

つくづく役に立たないレンタル屋の店員だと思ったww


そしてエミちゃんは曲を聴きながら、歌詞を起こしてくれたようだった。
「彼氏に聞きながらやったけど、間違ってる部分もあるかも…」
とあった。


今なら歌詞を調べるのもすぐだろう…
そのままコピペしてメールで送れば大した手間もかからない。

当時はいろいろ面倒だった。
PCがなかった。メールがなかった。携帯がなかった。
好きな曲もなかなか曲名すら分からなかった。

でもそんな中、わざわざ曲を聴きながら歌詞を書き起こしてくれたことが
今でも嬉しい。


その曲の歌詞は、英語が苦手な自分でも
なんとなく意味が分かったし、
本当にいい歌詞だとおぼろげながら思った。

あの綺麗なメロディに乗っている言葉が、こんな素晴らしい歌詞だったとは…



その曲は、数年後、ジブリの『思い出ぽろぽろ』という映画で
主題歌になった。
都はるみが日本語訳詞で歌っていた。

もう今では、結構多くの日本人が知ってる曲になってると思う。

タイトルは知らなくてもメロディを聴けば「ああ」って思うんじゃないかな。


ベッド・ミドラーの『THE ROSE』って曲だ。


この曲を聴くと、
そしてアカデミー賞のこの時期になると
エミちゃんのことを思い出す。

今は日本にいるのだろうか。
それともあの時の彼氏と結婚したかな。
そうじゃなくても、きっと今でもエミちゃんは
アメリカの空の下にいる気がする。


そして彼女も『THE ROSE』を聴くたびに、
あのレンタル店でのことを思い出して笑っていてくれたら嬉しい。
 
    

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2017/03/08 20:23
紅緒さま

ふむふむ~。あの皆勤賞の人と似てるんですね^^
今でもお付き合いがあるとは…すばらしいことだと思います。

エミちゃんも自分の欲望に正直な人で、ちょっと上のブログでは省略しましたが
最初は私は別のAさんと同室で、そこにエミちゃんが入ってきて3人部屋の時期があったのです。
でもAさんも結構欲望に忠実タイプでww 
最初はエミちゃんとAさんがすごく仲良しで私は距離を置いてたんですが、
3か月もせずに二人が衝突し、あの部屋でバトルがあり…(^-^; Aさんが別の部屋へ。
そんなこともありました。似たようなタイプ同士は難しいってことですね。
紅緒さんも紅緒さんだからこそ、そのお友達とずっと仲良く出来てるのかもですよ(*^_^*)

『おもひでぽろぽろ』はジブリの中では地味な映画ですよねww
宮崎さんではなかったのかな。(高畑さん?)
私は主題歌で期待した分、中身にはちょっと残念でww なんでこれ実写じゃなくアニメ?
アニメにした意味なんだろー?とか当時思ってましたねww
紅緒さんは田舎暮らしに憧れた時期とリンクしたんですねぇ。
私の映画の感想も読んでいただいてるみたいで嬉しいです^^
これからもちょこちょこ書きたいと思います(*‘∀‘)ゝ
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2017/03/07 11:21
エミさんはすごい人ですね~!そのハートの強さ、羨ましいw
多分全然違うだろうに申し訳ないと思いつつ、先日私が話した皆勤賞を通した子に似ているなぁと思って読んでいました。成績に納得が行かなければ聞きに行くと思うし、自分がアメリカにいなくて泣く事もしそう、と思う人なんですよ。どこまでも自分に真っ直ぐというか。いつも、そんな報告の手紙が来たり、メールが来たりしましたもんで。
そう、自分とは余りにも違うすごさに圧倒される人は嫌いじゃありません。でも会って話をしていると余りにも個性が強くて、常に自己否定をされている感覚を持ってドキドキしてしまうのですけど。羨ましいんです。裏返しの感情なんですね。

『THE ROSE』は私も好きな曲です~。
『おもひでぽろぽろ』も好きな映画で、田舎暮らしに妙に憧れていた頃に見たものですから心に染みて。最後にあの曲が流れてきて、なんだかすごく泣けた映画でした。

あまり映画を見ないのですけど、あらすじを読んで見たいと思ったりはするのです。なので、ころんさんの映画感想も楽しみに読ませて貰っています♪
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2017/03/05 21:39
縁さま

いえいえ、こちらこそ読んでいただいて
ありがとうございました^^
 
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2017/03/05 13:16
いいお話、拝読させて頂きました^^ ありがとう^^
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2017/03/04 22:44
a01さま

おお~。これです、たしか。
「たぶん明日もNYが好きです」覚えてました。
懐かしい…。ありがとうございます^^
本当便利な世の中になったもんです。

まぁ。私が店員の立場でも「どんな曲?」って聞くとは思いますが…ww
あの時代だからこその様々な諍い…ってところでしょうか。
きっと今なら発生しない問題ですね。
そーゆーの、いっぱいあるんだろうなぁ~。
 
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2017/03/04 14:08
http://youtu.be/EjXlwZnKMxM

これですか?
ブログを読みながら探し出せました。ホント、便利な世の中です。

「どんな曲?」って答えずらい質問ですよね。
歌えと? 私に歌えと言ってるのか?
それとも「重厚かつ繊細で…」と感想を言えばいいのか?
それで伝わるのか?
ましてそこから曲を導き出そうなんて勇敢な店員さんでしたねw



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