Nicotto Town


ころんころん日記


君は湖を見たか


私、夏の間、お隣のお隣の町に仕事で通っていた、という話は
以前のブログで書きましたがーー
そこでの出来事。

そこの駐車場はですね、とっても綺麗な湖の真ん前にあったんです。
で、会社自体が小高い丘の上に建ってて、駐車場もそこにあるものですから
駐車場からその湖が、うわぁ~~っと見渡せるわけです。

最初行った時はとても感動しました。
なんつーいい所なんだと。

でも、じっくり見ようにも、見ずらいといいますか…。
会社の駐車場にぼんやり眺める展望スペースやベンチがある訳でもなし
朝夕には頻繁に車が行き来してますから、そもそも変な所に立ってちゃ危ない。

しかし、特に夕方の日が沈む頃合いには、本当に美しいのですよ。
方角的にもちょうど湖に夕日が沈みゆく様が見える場所で。

でもみんなその光景には慣れているのか、誰も気にとめてないし
みんな湖の方へは目もやらず、すたすたと足を速めている。

もったいないなぁ~  なんて思っていたのです。

かと言って自分だけ、その日常の風景の中、
綺麗だなと一人で眺めているのも何か滑稽に見える気がして
立ち止まる事が出来ませんでした。



ある日、仕事を終え、駐車場の方へ歩き始めると、
ある若い社員らしき男性が、立ち止まって湖の方を見ている。

はい?と思って、彼の見ている方へ目をやりました。

その日は天気が悪く、若干曇っていたんですが、
その雲の隙間から、太陽の光が射し込んでいて、その光が湖へーー。
その一部分だけ光に照らされた湖が、暗い中、明るく光り輝いているのです。

それはそれは美しく、幻想的な光景でした。

その男性は、私に気付き、また湖を見て、
「すごいですね」と言いました。


私は、「あそこだけ光があたって、云々かんぬん…」と返したような。
よく覚えていない。
きっと動揺したんでしょう。
夕日でも湖でもなく、彼にw

正直、その時、湖の美しさに驚くよりも、
その男性の方に驚き、心撃ち抜かれておりましたww

いつもゆっくり見たいなと思っていた湖、立ち止まって眺めたかった夕日。

でも朝夕の忙しさや、そこで立ち止まる事への気恥ずかしさから
それを出来ずにいた自分。

しかしながら、このお若いの、
なんなくそこに立ち止まり、見知らぬ人間に素直にそれを口にする、

その心の無垢さよ!

私ゃ、夕日に感動したんじゃない、あんたに感動したよ(=_=)



そんなこと、その日の帰り道に思いながら、そういえばと
ある小説のことを思い出しました。
小説というか、脚本ですか。

倉本聰作、『君は海を見たか』


倉本聰といえば、ご存知でしょうか。
あの伝説のTVドラマ、『北の国から』の脚本家です。


ずっと学生時代からそのドラマは好きでしたが、
『君は海を見たか』は知らなくて、同級生が図書館にあるおススメ本として
紹介してくれました。

初めて読んだ時は、頭殴られたくらい感動しました。
しばらくひきずりました。

内容は、(以下、ネタバレしますーー) ****************

仕事、仕事、でやってきたエリート社員が、一人息子の病気を知り
初めて仕事とは距離を置く。
それまで彼は沖縄の海中公園の仕事をやってきたのだが
それも辞めざるをえなくなる。

息子の病状は日増しに悪化。
ある日、息子の学校の担任に呼び出され、以前息子が書いた絵を見せられる。
真っ黒な海の絵ーー。

「お父さん、あなた息子さんに海を見せたことありますか?」

仕事に追われ、全く息子との時間を持たなかった父親。
彼は、もう既に自分が退いていた仕事の現場、沖縄の海へ
息子を連れて行く。

その時、ハッとする。
息子に海を見せてなかったどころか、自分自身も毎日ここへ通っていながら
海なんか全く見ていなかった、と。

************************************

まぁ、その後も、少し展開があり、物語は終わりますが、

実は私、この脚本、めっちゃ感動したんだけど、
そのドラマ自体は見たことがないんです。

まぁ、レンタルとかにも置いてないし、見るチャンスもないですが、
理由はそれだけではないかも。

きっと、自分の中にもう、完璧な沖縄の海の映像があって、
きっと、それを超えるものはないだろうと思ってるからなんだろうな。
その自分だけの海のまま、この物語は、心に留めておきたいのかも。



湖を眺める彼を思い出しながら、そんな昔の物語が心に蘇りました。

彼はきっとどんなときにも、そこに足を止める事が出来る人間でしょうね。
そして綺麗なものをそのまま綺麗だと照れも衒いもなく言える人間でしょう。


実は後日、彼を職場で見ないか気にかけてみましたが、
もう出会いませんでした。

こう言うとあれだけど、少し気弱そうな、大人しそうなーー
いや、ぶっちゃけますと、俗にいう「イケてない」感じの人だったw

でもでも、綺麗な心の持ち主なんでしょう、たぶん。

そういうのは、きっと分かりにくい。目には見えにくい。
見過ごしやすい。

そういう心を注意深く見つけていきたいと思う今日この頃の自分です。



あの一瞬ーー、
綺麗だなと、湖を見て2人で立ち止まったちょっとの時間、

それだけで、2000km の通勤も、何十分もの渋滞も、
パソコン凝視も、肩首の凝りも、手の痺れも… エトセトラエトセトラ…

全てが吹き飛んで、お釣りがくるってもんですよw

きっと本当の美しさは、夕日の光でも湖の輝きでもなく、
それを美しいと思う人間の心の中にあるんでしょうーー。
どんな時も、
立ち止まる事を躊躇してはいけないなと改めて彼に気付かされました。

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2017/09/19 00:51
あ、分かってもらえますw? イメージの大切さww
作品ってもう世に出したら作者のものじゃなくなるんですよね。
それぞれの受け手の中で育っていくものーー。
なのであの作品は、私にとってはドラマではなく、脚本なんですよね。

そっか!彼は妖精(இɷஇ ) いいですね、それw
ああいう純粋な存在にいきなり触れると、俗世間にまみれた自分としては
つまんない受け答えしか出来なくて、哀しい限り…。
あぁ、でもまた見たい(*´ω`*)
 
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2017/09/18 00:45
小説などで読んで、そのイメージを壊したくないって気持ちよくわかります~
やはり誰が何と言おうとも、その最初に沸いたイメージって大事だし大切にしたいですよね。
例え言っていたのが作者その人であろうとも!
なのでドラマを観てないのは正解かもですね。
思い描いた画よりも上ってまずないですから。

彼は妖精さんだったのでしょう。
きっところんさんを立ち止まらせ、色々と気づかせてくれた上にブログネタを献上してくれたw
うん、妖精さんに違いない。ちょっと残念な妖精さんww
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2017/09/17 21:53
縁さま

8連勤、お疲れ様でした~。
ある意味、この大型台風は良かったかもしれませんね。
どこにも出かけられなくて、家でゆっくり出来て^^

描写褒めていただいて有難うございます。
景色が想像してもらえたらうれしいです(*'ω'*) 綺麗な湖と夕日だったんでw

そうですね~、日々色々なものが変化していってますが
中々それには気づけませんね。忙しい生活なら尚更そんな余裕ないですよね…。
でも、ふと足を止める時間、持ちたいですよね。
色々なことに慣れてしまいたくないですよね。
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2017/09/17 19:52
こんばんは^^
8連勤をようやく終えて、暦通りの連休で疲れを癒すぞーっと思ったら連日の雨で引きこもっています。

ころんさんは、文章構成もさる事ながら、言葉の描写がとてもお上手ですね。
一度も目にしていないわたしにも、どんな景色なのか想像することが出来ました。
毎日、同じ道を通っていると、毎日同じ景色に慣れてしまい、見向きもしなくなりますが、
いつの間にか栗の花の香りが無くなっていたり、ひまわりが太陽に向かって元気に開いていたり、
蝉時雨が鈴虫の声に変わっていたり・・・、同じようでいて、同じではないのですよね。
心が忙しいとそういうことに鈍感になります。
日々の変化を感じ取る余裕を、しっかりもっていたいです。
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2017/09/17 15:39
わすれねさま

コメントどうもです~。
創作日記っていうか、実話日記ですw
カテゴリは、本の話題を入れてるので無理矢理「小説」に分類w
実際は、脚本なんですが。

独立した精神を持った人間、って少なくなってる気はしますね。
でも、昔が多かったのかすら、生きてないので比べられませんがw

戦争に走る政府ーーに関しては、いろいろ意見もありますが
長くなるのでやめておこうか(^▽^;)
今はいい時代にはなっているとは思います。
ネットがありますからね~。
どんな意見だって、匿名で書きこめるし、それを人が目にすることが
出来るんですから。
少数派が口を噤むことは、昔に比べたら減ってきてるんじゃないでしょうか。

色んな意見の中で、じゃあ自分はどうなんだ、どうするんだ、っていう思考力を
付けていく事が、これからは大切なのかなぁと思ってみたり。

ネットの弊害は数々あれど、それでもうねうねうねりながらも、
時代はよくなってきているんじゃないかなぁ、とかも思ってみたり(*´ω`*)
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2017/09/17 14:08
カテゴリ『小説・詩』———これは創作日記なんですかね??
ええ話やなぁ〜〜(*^^*)


丁度今朝の読売新聞1面で、阪大名誉教授の記事を読みましたが・・・

「多数(平均的意見)から逸脱することを恐れる気持ち」は
『「他人と違うということは即ふしだらである」という風潮』の中で
何かをはばかり、何かにおもねっているだけという場合が多い、という
戦前の自由主義者の言葉を引用して解説していました。

独立した精神を保持しうる風土があるかどうか、その気概を社会的に封殺しないためにも、
「お仕着せの教育プログラムで知的活力や勇敢さを奪い取らないことが、
 これからの日本では極めて重要である。」と結ばれていて、
確かに、一人一人が人からどう見られるか考えるより自分がどう思うか考えることで、
戦争に走る政府を止めないといけないんだなぁと、
あっちこっち思考は飛んでいったのでした(^^;)ゞ




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