Nicotto Town



モグラ・・・その11

久々「森の家」に戻って来たサンちゃん
次は何が待ち受けているんでしょう

「こんちわぁ~」
大きな声をあげてサンちゃんは入口の扉を開けた

勝手口から入ろうとしたけど
まぁモグラもここから入った事だしと後に続いた

「サンちゃ~ん、久しぶり」
美しいトーンの響き

本物だ
本物のヴィーナスだ

サンちゃんは思わず「うぉ~、どうもで~す」と
我を忘れて浮足立った

両手でスコップの入った箱を持っていることを忘れ
手を振り上げた

引力でスコップが落ちた
足の甲にダイレクトに箱が当たった

「痛ってぇ~」
慌ててヴィーナスが駆け寄る

「大丈夫、相変わらずおっちょこちょいなんだから
でもその仕草を見て安心したわ」

「スコップ大丈夫だったかしら」
そう言ってヴィーナスは笑い転げた

「あの、痛かったんですけど」
「口が利けるんだから平気なんでしょう」

「ま、まあね」
サンちゃんも痛そうに笑った

「ありがとう、本当に助かるは
新しい薬草を植える花壇を作るの」

「花壇と言うより畑かな
そう薬草園と言った所かな」

「どの当たりに作るんですか」
「日当たりのいい庭の隅っこ」

「25メートルプール位かな」
「そんなに広いのを作るんですか」

確かにペンションの庭は変に広い
以前雑草取りをやってバテバテになったのを思い出す

「頼んだわよ、一人で大変でしょうけど」
「えっ!僕ひとりでやるんですか」

「あら聞いてないの
そうか手紙にはそこまで書かなかったね」

「若さで頑張って、
ちょっとはモグラと手伝うわ」

「25メートルですよ・・・
夏で暑いんですよ・・・」

いくらヴィーナスに会えたと言っても
夏子さんが来ると言っても・・・トホホ

まぁここまで来たんだから
やるっきゃないかと腹をくくる

「サンちゃん久しぶり」
肩を落とした後ろからミラクルボイスが!

反射的に振り返る
なななんと夏子さんがそこにいた

相変わらず
光り輝く端整な顔立ちの菩薩様みたいだ

「お元気?
私、予定より早く来て絵を描いてるの」

「ここは私の故郷よ良い絵が描けそうだわ」
「そう言えば薬草園を作ってあげるんだって」

「モグラさんもヴィーナスさんも待ちかねていたみたい
きっと喜んでいるわ」

「でも、一人で25メートル・・・」
どうしようかなって顔で言った

「頑張ってね
グリコのキャラメルを食べれば、一粒500メートルはOKよ」

「いや正解は300メートルです」
なんて言うのは止めた

「ふふふ・・・
良い事教えてあげる」

「モグラさんこの日の為に買ったのよ」
「何をですか」

「こ・う・う・ん・き」
「サンちゃん用だって」

「えっ、シャベルで掘り返すんじゃないんだ」
「良かったわね」夏子さんは微笑んだ

やったぁ~
もう24時間張り切っちゃうから!

その時夏子さんの顔色が変わったのを
僕は見逃さなかった

笑顔の菩薩様が突然
真剣なちょっと怖い氷の彫刻みたいに・・・

「あれ見て」
視線の先を振り返ってみる

瞬間僕は凍りついた
それは入口に掛けてある夏子さんがかいた森の湖の絵だ

深く澄んだ湖底にあの白い箱が5つ現れていた
あの時消えていたはずなのに

その時遠くに電話の音がした
『はいこちらペンション「森の家」でございます

ご予約でいらっしゃいますか・・・・・・
はい、かしこまりました、お待ち申し上げております』

すぐにヴィーナスがこちらへと足早にやって来た
「サンちゃん、お客様よ」

「ネットでカルテが送られて来たら
症状に合わせて薬草を選ぶわ」

「お仕事が増えちゃったけど
お客様の為に頑張ろうね」

「私もお手伝いします」と夏子さんが言った
「よろしく」ヴィーナスは真剣な顔でうなずいた

「それよりあの絵・・・」
夏子さんは指さしながらヴィーナウを見た

「そうなの
お客様がいらっしゃる前に必ず箱が現れるの

そしてお帰りになる時には消えている
よくわからないけど

夏子さんの強い思いが
絵に入り込んでいるのかも知れない」

「私の・・・」夏子さんは絵を見つめた
美しい・・・僕は絵よりも夏子さんを見つめていた

ポカッ・・・頭に軽い痛みが
「何処を見てんの」とヴィーナスのパンチ

「さぁ荷物を置いて来たらお仕事開始よ」
「でも今来たばかりだよ」

「それもそうね、
じゃ、一時間の休憩」

「私、サンちゃんに特別なティーを入れてあげる
さっきヴィーナスさんに習ったばかりだけど」

僕は夏子さんに入れてもらったティーを飲んだ
この世の物とは思えないくらい美味しく感じられた

僕と夏子さんは一時間の間
過去の現れた絵を見続けていた

「ねぇ、聞こえない?湖が助けを求めているわ」
夏子さんは澄んだ目でポツリとそう言った


今日はここまで
一体誰がお客さんとして来るのでしょうか

先はまだ考えていません^^





























アバター
2015/09/10 00:41
奈柚様

思いのこもった絵が
このペンションに来る人の心に共鳴しているのかも

そっと白い箱を絵の中に
セットし直してくれるんです

それにしても
不思議な絵です
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2015/09/09 22:57
絵に表れる箱
訪れる人の苦悩かな?
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2015/08/25 01:14
夢子様

スコップにシャベル
TVでやっていたかも

サンちゃんのは大きな方です
長っぽそい大きなギフト箱に入っていました

電車の中も大切に
バスの中でも大切に

耕運機があったので
喜んでいるところです・・・


いしころ様

今回の登場人物
どうしましょ~

まだ未定なんです
どうにかしましょう

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2015/08/25 00:42
自分をいつでも受け入れてもらえる仲間の存在って
素敵ですね~登場人物さんたちが それぞれにいい味を出しています
サンちゃんにとって夏子さんが気になる存在に・・
さてはて 今回のお客様は いったいどんな方なのでしょう。
楽しみにしています(^^)/
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2015/08/24 20:36
関西と関東では「スコップ」と「シャベル」の定義がちがうそうです。

関西では「スコップ」は大きい道路工事で使うようなものです。
「シャベル」は園芸用のものを指します。

どっちの「スコップ」かな?と悩んでしまっていまいちイメージがわかないんですけど・・・。

セカンドさん、教えてください。
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2015/08/24 00:58
さやたろう様

そうなんです
耕運機を登場させました

スコップじゃかわいそうですから・・・
でも、さんちゃんは働き者ですよ~
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2015/08/23 23:39
耕うん機、あって良かった(笑)

ヴィーナスの性格、大好きです٩(๑>∀<๑)و♡
さっぱりしてて!!

さんちゃんの憎めないキャラも大好き!!



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