Nicotto Town


コロポックル


猫の怪談


お婆ちゃんから聞いた猫の怪談を一節いきます。
静岡の村の話しで時代は幕末ですが幕末に関係無い猫の怪談です。
ある独り者の男が猫を飼っていました。たいそう可愛がり首に手ぬぐいを巻いてやっていました。
ある日、男は病気になって眠っていると、夜中になって木戸を叩く音がする。
「おい、おい」と呼んでいる。
こんな夜更けに誰かと思って起きようとした時に自分の隣から声がした
「おうよ、おうよ、誰だ?」
薄目を開けて見て見ると、囲炉裏のふちで丸まっていた飼い猫がスッと二本足で立って答えながら木戸を止めていたつっかい棒を外すと家の木戸を開いている。
男はあまりの事に声も出ない。
木戸をくぐって来たのは数匹の猫で、みな人のように歩って家に入ってきた。
男の飼い猫は仲間の猫が入ると木戸を閉めてつっかい棒をかけて
「近頃は物騒だからな」と一人ごちている。
招きいれた猫達は男には皆、見覚えがある猫ばかり、
一番大きな猫は庄屋さん所の猫だ。そしてどれも近所の猫ばかり
庄屋さんの猫が言う
「今夜の猫踊りに皆で誘いに来たんじゃ」
「一緒に行こうや」
すると男の猫は
「ここん所、飼い主の具合が悪いんで俺は看病があるから行かんよ」
と言って前足をペロリ。
庄屋さんの猫は
「そりゃぁ残念だ。俺は昨日、腹が減って気を抜いてしまってぇ飼い主の庄屋に一言、『腹へった』って人の言葉を喋っちまった。庄屋は内緒にしてくれたが、掟もあるし猫踊りに行ったらあっちに残って村には帰っちゃこれねぇ」
庄屋さんの猫は顔を前足で撫でながら
「おらぁ、長く生きて妖術も使えるから、村に悪さをする人間を道に惑わせて谷に落としたり、浅い河でも足を引っ張って溺れさせたりしたがよ」
恐ろしい話をするとクククっと笑った。
その猫の顔の怖い事。
眠ったふりをして薄目を開けていた男は息を呑んだ。
庄屋さんの猫は痩せた猫を引っ張って来て
「お前、良い手ぬぐいを貰っているんでお願いなんだが、こいつは手ぬぐいを持っとらんのよ、手ぬぐいの空きがあったら貸してくれんか?」
男の猫は
「手ぬぐいは俺の首にしてあるのより他は、飼い主の物だから貸したり出来ないが俺が首に巻いているのは貰ったものだから、やっても良いさ。手ぬぐいが無きゃ猫踊りにゃ行けんもんな」
痩せた猫は
「それじゃあお前さんが猫踊りに行けんだろ。手ぬぐいが無い俺が踊りにいけないのは仕方ないんじゃもの」
そう痩せた猫が首垂れると男の猫は
「飼い主が病気なのに添い寝もせんで猫踊りに行ったら笑い種じゃろう」
そう言って手ぬぐいを器用に首から外すと痩せた猫にくわえさせている。
「お前も猫踊りに行ったら帰らんの?」
と、言うと痩せた猫は嬉しそうに頷いた。
男の猫は「猫踊りは楽しみだが今夜は止めておくわ」そう言うとつっかい棒を外して木戸を開け猫達を出す。
庄屋さんの猫に
「寂しくなるわ」と、言って木戸を閉めつっかい棒をして囲炉裏りのふちで丸くなった。
男は静かに起き上がって猫を撫でると真新しい手ぬぐいを出して、手ぬぐいを無くした猫の首に巻いてやると
「俺は大丈夫だから猫踊りに行きたければ行って来い」と言ってやった。
猫は一声なくと、ふっと姿が見えなくなった。
朝が来て、具合の良くなった男が起きると飼い猫は囲炉裏で丸くなって眠っている。
「さては昨日の夜は夢でも見たか」
と思って猫を抱き上げると猫の手ぬぐいは夜に新しく巻いてやったものだとわかった。
猫の後ろ足だけがクタクタと汚れている。
そうして庄屋さんの猫は昨日から姿を消してしまったと言う話し、じゃった。


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2013/04/26 22:29
こういうお話
なんか好きです *''*
男と猫の絆・・・ 良いですね♪



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