Nicotto Town



FF7 ザックラ 「おかえり」


「あの…クラウドさん?」

あいつが、引きつるような笑みを浮かべて俺に呼び掛ける。

「確かに縛っていいって言ったけどさ、なんで亀甲縛りなのかな?」

「適当に縛ったらそうなっただけだ。細かい事は気にするな」

「てきとーにってさあ、お前神羅軍にいた時に捕虜の縛りあげ方とか習わなかったの?」

がっくりと肩を落とすザックスもどき。その仕種のひとつひとつが本物のザックスと重なる。

「うるさい事を言うのなら、口も塞ぐぞ」

そいつと向かい合うようにベッドに腰をおろしながらそう言うと、そいつはため息をひとつつき、話し始めた。


「あの時。オレは確かに死んだ。だが、死んではいなかった。

精神は確かに死んでライフストリームに還ったんだが、身体の方は埋め込まれたジェノバ細胞とセフィロスの細胞が死ぬ事を拒み、精神のない入れ物だけが生き残ったんだ。

オレの意識は精神と共にライフストリームにあったんで残った入れ物がどうなっていたのかは知らなかったんだが、

どうやら神羅兵が去った後、タークスが見つけて保護してくれていたらしい。

あの、エアリスの教会で別れを告げた…つーか、単に手を振っただけだけどさ、アレ憶えてるか?

実はあの後エアリスに、「傷跡も残らない程回復した筈だし、あんまり留守にしてるのもよくないからそろそろ自分の身体に帰りなさいね」ってライフストリームから蹴りだされたんだわ。

んで、気がついたらどっかの小さな病院のベッドの上。多分、神羅に目をつけられにくい場所を選んでくれたんだろうな。

気がついてしばらくは記憶が混乱してたり、ずっと寝っぱなしだったせいで体力が落ちてたりしたけど、

そこの医者や時折様子を見に来るツォンに色々面倒見てもらって、記憶も徐々に戻っていったし、体力は元々ソルジャーだからな。戦える程に回復するのにそんなに時間はかからなかった。

で、すっかり回復したオレは、医者からちゃんと退院許可を得てお前に会いに来たって訳だ。…納得してくれた?」



最後にその言葉と共に小首を傾げてにっこり笑うザックス。

信じたい…けど、信じられない。


俺は…正直信じるのが怖い。信じて受け入れるのが怖い。

もしもこれが本当のザックスだと信じて受け入れた途端、

朝になって誰もいない部屋で目が覚めるんじゃないかという気がして、これを現実と受け止めるのが怖い。

だから俺はベッドから立ち上がると、じっとこちらを見上げるザックスの頬に手を伸ばした。

これが本当のザックスだと証明するかのような傷のある頬を撫でると、そのまま抓りあげる。

「いっでぇ」

大声を上げるザックスの口を、あわててもう片方の手でふさぐ。

「ティファや子供達が起きてきたらどうするんだ」

さんざんドタバタやっていて今更という気もしたが、それでも今度こそ起きてくるかもしれない。大体大袈裟なんだ。せいぜい胡桃の殻を砕く程度の力しか入れてないのに。

だが、ザックスは

「ああ、大丈夫。スリプルかけてあるからそう簡単には起きねーって。つか…痛いんでそろそろ離してクダサイ」

そうあっけらかんと言い放った。

「スリプル? マテリアはどうしたんだ?」

手を離しながらそう言うと、ツォンからもらったと返ってきた。

「『金は用意できないから、代わりにマスターマテリアを二個用意した。これを売り払って金にしてくれ』ってことでさ。一個は売り払って金に換えたけど、もう一個は念の為に取っておいたんだ。

まさかこんなところで役に立つとは思わなかったけどな」

そう言ってからからと笑う。

その声も、さっき触れた頬の温かさも、全てがこれが本物のザックスだと告げているような気がして、俺は引き寄せられるようにザックスの頭を抱きしめた。


「クラウド?」

「本当に本物なんだな? 朝になったら消えてた。実は夢でした。なんて言わないな?」

問いかけるように名前を呼ぶ声には答えず、逆にただひたすらこれが本物のザックスである事を願うように問いかける俺に、ザックスは一言「ああ」と答える。

「偽物でも幻でも夢でもねえよ。お前を想うこの気持ちに掛けて誓う」

「…うん、信じる。お帰りザックス」

「ああ。ただいま、クラウド。 なあ、オレも抱きしめたいし、そろそろロープ解いてくんないかな?」

「やだ」

「え、即答?!」

だって、ようやくつかまえたんだぞ。

俺が満足するまで。俺の気持ちが落ち着くまで、大人しく縛られていろよ。 

 

 

続きを書きたいと思いつつ、もうすぐ二年ι

 

 




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