Nicotto Town


ぽいじゅんのぽじてぃぶぽんちょ


バレンタインスクランブル -リュウジ-

「待て・・・それには」
うぜー。マジうぜー。待てって言われて誰が待つかっての。
つか何ホームレス相手にマジになってんのよ、オレ。
目的地もなく再び街を彷徨う。

今日は朝からイラつくことばかりだ。
泥酔したオヤジの叫び声で起こされた。
昨日もどこかで飲んでやがったんだろう。ちっクズ野郎が。
つか一体その金はどこからわいて出んのよ。
そんな金があるならオレによこせっての。
極めつけはアイツだ。
遊びに行くから金クレっつったら、今日はバレンタインだからってチョコレートなんかよこしやがって。
一体イクツだと思ってんだよ。つか日本語理解してますかって感じ。
いつもヘラヘラしやがって気味ワリーし。
大体なんであんなロクデナシのオヤジと結婚したんだか。意味わかんねー。
毎日毎日殴られて、一人で働いて、あげくその金酒代に使われて。
バカじゃねーの。何が楽しくて生きてるだってゆー。マジわかんねー。

結局アイツの財布から金を拝借し、渋谷に来た。
特に予定なんてなかったが、ウサ晴らしがしたかった。
そんな時に遭遇したのがキレイにラッピングされた紙袋を持ったホームレス。
直感でチョコレートだと思った。
今朝の出来事を思い出した。
オヤジのこと。アイツのこと。オレのこと。イラつくこと全て。
気付けばホームレスを蹴り飛ばしていた。

イライラはまだ収まらない。
ホームレスから奪い取った紙袋に目をやった。
こんなモンいらねーんだよな。つか、よく考えたら汚くね?
紙袋を投げ捨てようとした瞬間。どこかでけたたましく笛の音が鳴り響いた。

「待ちなさい!」
振り返ると人ごみを掻き分け、警官がこちらに向かって猛烈な勢いで走ってきていた。
やべー。こんなモンいらねーし。まったく今日はツイてねー。
紙袋を投げ捨て、全力疾走で渋谷の街を駆け抜けた。




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