Nicotto Town


ぽいじゅんのぽじてぃぶぽんちょ


バレンタインスクランブル -ヒロキ-

「待ちなさい!」
何やら騒がしい。どうやら警官がチンピラを追いかけているようだ。
あれ?あの警官・・・気のせいだろうか。まあいいや。
それにしてもカホのやつ一体何の用だったんだろう。
せっかくの日曜に人を呼び出しておいて、挙句キャンセルって・・・。
完全に振り回されてるな。いつものことだけど。

ふと気付くと、道端に紙袋が落ちていた。
手に取るとラッピングは既にボロボロになり、封も開けられていたので中を覗き込んだ。
どうやらバレンタインのプレゼントのようだった。手紙も入っている。
大切なプレゼントを落とすなんておっちょこちょいな人もいるものだ。
それにしてもどんな運命でこんなボロボロになってしまったのか、かわいそうに。
特に予定もなくなったので警察に届けておくことにした。

山手線渋谷駅東出口を出て少し南に進むと、角地にひっそりと渋谷警察署がある。
この騒々しい街を取り締まるその国家機関は、どこかくたびれていた。
入り口から目に付いたカウンターへ行き、落し物を届けにきた旨を伝えると
面倒臭そうに他の受付へと回された。
指示されたカウンターへ行くと、
驚いたことにそこで待っていたのは先ほどチンピラを追いかけていたあの警官だった。
やはりこの警官、どこかおかしい・・・

「落し物を届けて下さったようで」
疑念を掻き消すかのように警官は穏やかに話しかけてきた。
道端でプレゼント用だと思われる紙袋を拾ったこと。
拾った時既にボロボロで開けられていたこと。
中を見るとチョコと手紙が入っていたこと。順を追って説明した。
そして先ほど街で警官を見かけたことを話そうとすると、

「わかりました。最近にしちゃ珍しく真面目な若者だ、感心感心」
警官は遮るように事務手続きへと移った。
名前や連絡先などを記入する用紙を差し出され、
どこか釈然としないものがあったものの大人しく従った。
黙々と個人情報を記入していると、なにやら警官が手紙と用紙を見比べている。

「どうかされましたか?」
「いやね、君の名前もヒロキ君なんだなーと思ってね。偶然にしちゃー、ねえ?」
そう笑顔で話し、警官は手紙を見せた。そこには確かに『ヒロキ君へ』と書かれていた。

「あーっ!」
突然背後で女性の叫び声が聞こえた。振り返ると見覚えのある姿があった。
サオリだった。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.