読書ノート/奏者水滸伝 阿羅漢集結
- カテゴリ:小説/詩
- 2010/10/25 18:55:39
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読書ノート
「奏者水滸伝 阿羅漢集結」今野敏
相変わらずの疾走感にやられました。
気がつけば読み終わってました。
グイグイ引きこまれるジャズセッションのシーン。
昔、
始発待ちのジャズ喫茶で運良くジャズセッションを
体験する事がありました。
体験というと変かも知れませんが、
アレは聞く。というよりは体験するものだという気がします。
あの感動は忘れられません。
ジャズに関しては素人なのですがそれでも、あの
誰でもが知っている有名な曲が奏者達のソロパートで
独自の、だがしかし全体を乱す事がないままに、他の奏者への語りかけの様な演奏を始め、それに応える奏者が現れソロを引き継ぎ、そしてまた…そしてやがて再びまたメロディに戻り
他の奏者とひとつのメロディを奏で始める。
素晴らしい曲を演奏しているうちに、ソロを任された人が、
俺はこの曲はこう思うんだ。こう演奏したいんだ。
お前らどう思う?
あなたはこう思ったのね。
ああ。あなたが作ったメロディに触発されて、
私の中のこの曲へのイメージがまた広がってこうなるわ。
お前達が広げた曲のイメージが俺の中のイメージを広げていく。
俺は俺の楽器の表現の中で、
それをこう表現しよう。
そんな奏者同士の話し合いが聞こえてくる様な、
しかしそれは際限なく闇雲に広げられていくものではなく、
元の曲を愛すればこそ故だからなのか、
奏者によって膨らまされた曲はまた破綻なく元の曲として終る。
ってのはあくまでも私の感じたその日のセッションのイメージなのですが、へたくそな説明わかっていただけたでしょうかw
その感動を思い出させる物語でした。
ジャズのレコードもいいです。
が。
あの即興の演奏を聴いて以来、
レコードを聴く気が良太郎…今ひとつ薄いですw
さて。物語は一人のお坊様が何故か、
日本各地の天才的なプレーヤーを訪ね歩き
東京へ呼び集め、
お互いにその存在を知らなかった天才プレーヤー達が
集結するというある種のジャズストーリーなのですが、
そこに武道や音楽、神秘の世界、深い精神性と
現実の生臭い問題が複雑に絡み合う。
いやはや。
もーのすごい物語です。
今野さんはSTシリーズの緑の調査報告書だったかな?でも
クラッシック音楽についての深い造詣を素人に
垣間見せ、その世界を楽しむ為の手ほどき編…
といった内容をご教授下さってますが
ご本人がよほどお好きなのでしょう。
ジャズへの深い情熱がほとばしっていました。
いやはや。面白かったです。
読後感は★★★★★
文句なし星五つ。
胸いっぱいにこみ上げる感動。
面白かったです。
今思ったのですが…
東川さんも凄く面白いのですが
何故か星五つを付けるのに何か腰が引けるのは、
この読み終えた後の感動が薄いからかも知れないです。
けども…東川さんの作風だとこみ上げる様な感動は…求めるのが間違ってるかな?
方向性は違いますが、
東川さんも間違いなく面白いです。
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