Nicotto Town


ドリーム・バー 「デスシャドウ」


春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」29


 「春田、有り難う・・・。」
 ようやく落ち着きを取り戻した谷本が、彼にお礼を言った。
 「アホが・・・。俺まで巻き込みよって・・・。」
 春田はアゴに手をついて窓の外を見た。
 「ゴメン・・・。 着いてきてもらって・・・。」
 「だから・・・。泣きそうになるんは止めろや! 男の泣き顔なんて見たないわ!」
 「うん・・・。」

 列車は定刻通り西舞鶴へ到着した。二人は北近畿タンゴ鉄道に乗り換えて、宮津を目指す。
 「何か、久々にこっちへ来るよ・・・。」
 谷本は闇に染まった車窓を見ながら呟く。
 「そういや、お前の学校は宮津やったな・・・。」
 「正確には宮津の一つ手前なんやけどね・・・。」
 「一回、野球の練習試合で行ったことあるわ。」
 「そういやお前、野球部やってんな・・・。」
 「ああ、俺のバッティングで海まで飛んでったで・・・。」
 二人がたわいもない会話をして三十分、列車は宮津に到着した。早速、宮津署に向かう。
 「どうも、ご苦労様です。宮津署の警部、酒井です。 京都府警の木村警部より伺っております。早速ですが、遺体を確認して下さい・・・。」
 三人は地下の霊安室へ向かう。中に入り、酒井が遺体にくるまれている布を取り外すと、白髪の老人が横たわっていた。それは紛れもない、大村 神一の遺体だった。
 「せ、先生!!!!!」
 大村の顔を見るなり、谷本は飛びつく。今まで我慢していたのであろう、遺体にすがりつき嗚咽し始める。
 「何で・・・。 何で・・・殺されたんですか・・・・・。」
 部屋に入ってどれ位の時間が経過したであろうか? 酒井が声を掛ける。
 「事情聴衆したいのですが、宜しいでしょうか?」
 「・・・・。 すいません、取り乱しまして・・・。」
 「取りあえず、上にあがります。」
 二人は霊安室を出て二階の応接室へと通された。
 「念の為、お二人の名前とご関係を聞かせて貰えますか?」
 「僕は谷本 治です。大村探偵事務所で、先生の助手をしていました。」
 「僕は春田 貴史です。彼の友人で、今日は付き添いで来ました。」
 「谷本君に、春田君ですね。」
 酒井は記録紙に名前を書き留める。
 「殺害された大村氏に家族は?」
 「いえ・・・。奥さんも既に亡くされて、先生は事務所で生活してましたから・・・。」
 「親戚とかは?」
 「分かりません。 あの年齢ですから・・・。京都府警捜査一課の木村警部なら、何か知ってるとは思いますが・・・。」
 「成る程。後ほど確認してみましょう。 では、谷本君に確認しておきます。遺体を検死解剖に廻したいのですが、宜しいですか?」
 「・・・・はい。 一刻も早く、犯人を逮捕したいので・・・。お願い致します。」
 「わかりました。 で、大村氏の殺害状況ですが、胸部をナイフで一突き。ほぼ、即死の状態でした。解剖してみなければ何とも言いようがありませんが、死亡推定時刻は今日の13時半頃だと思われます。」
 「・・・・・。」
 「では、殺害された大村氏の事について質問して宜しいでしょうか?」
 「・・・・・・はい。」
 「殺害された大村さんに、何かおかしな事はありませんでしたか?」
 「話が長くなりますが・・・。 宜しいでしょうか?」
 「どうぞ・・・。」
 谷本は大村が宮津に来た経緯と、今まで自分が調査してきた事をすべて話した。酒井は驚いた様子で話を聞いていた。
 「その・・・。 話に出てきた太田 陽子って女性なんですがね・・・。 今回の第二発見者なんですよ・・・。」
 酒井は頭を掻きながら話すと、谷本は驚いた表情を見せた。
 「何で? せ、先生の依頼人ですよ? 彼女は! しかも、先生は彼女の後を付けて、高知から岡山、宮津へと転々と移動していたんですから!」
 「谷本君の話を聞いてると、何かトラブルにでも巻き込まれたとしか考えられませんね。」
 酒井は記録紙に書きながら答える。

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2010/12/17 21:51
 ふう~。 皆様、長らくお待たせいたしました。久々に小説の続きを投稿する事が出来ました。

 色々と仕事で忙しかったですから・・・。9月前半を最後に、全然書けてませんでしたね・・・。
小説の内容を忘れた方、あるいは初めてこの小説を目にする方。すいませんが、もう一度読み返しては頂けないでしょうか? ミステリー小説なんで、ストーリーが分からないと話の展開が読めないと思いますので・・・。 



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